初心者でも簡単な心電図波形の読み方!病棟での約9割の心電図を判断しよう!!

心電図波形を勉強し始めたけれども、難しくて困っているというあなた。
そんなあなたのために、これさえ抑えれば、病棟でのモニター心電図装着患者の約9割の心電図波形を読めるようになる方法を紹介します。

目次

心電図波形の基礎

簡単に心電図を読みたいと思っていても、基本は知っておかなければなりません。
基本を覚えるための近道はありません。

正常を分からずして、異常は見抜けません。

刺激伝導系とは

心電図を勉強するためには必ず必要になる、刺激伝導系の知識について学んでいきましょう。

刺激伝導系は心臓が拡張と収縮を繰り返して行うための電気刺激の通り道をいいます。
刺激伝導系の流れとして

洞結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維の順番で電気刺激が流れることにより、心臓が1回収縮します。

この刺激伝導系が正常に機能して、心臓が収縮することにより心電図波形は洞調律(サイナスリズム:SR)となります。

逆にいうと、刺激伝導系に異常をきたすと不整脈が生じるということになります。
そのため、心電図を覚えるためには心臓の動きをイメージすることが非常に大切であるといえます。

波形だけを覚えようとしても、なかなか覚えることができないと思います。
心臓(刺激伝導系)に異常が生じているからこそ、心電図に反映されるのです。

大切なことは
心臓の動きをイメージしながら、不整脈を学ぶことです。

刺激伝導系には、主に3つの特徴があります。

①刺激伝導系はどこからの指示がなくとも自動能を持っており、刺激を出し続けることができます。刺激伝導系のトップである洞結節の自動能は60~90回/分です。人の心拍数の正常値である60~90回/分はここが基になっている訳ですね。
そして、その自動能は房室結節・ヒス束と下位へいくほどペースが遅くなります。

②刺激伝導系には優劣があり、下位の部位は上位の部位に必ず従います。最も上位は洞結節、最も下位はプルキンエ線維です。

③心房と心室を通る刺激は一方通行で、房室結節→ヒス束という流れのみです。
(心室から心房への刺激の伝導は通常起こらないということです。)

 

正常心電図波形とは

心電図波形の正常なものは上図のようになります。

それぞれに呼び名と正常値があります。
P波の幅→0.06~0.10秒
PQ間隔→0.12~0.2秒
QRS波の幅→0.06~0.10秒
QT間隔→0.25~0.45秒

P波は心房の興奮、QRS波は心室の興奮、T波は心室の興奮からの回復を現す波形となります。

正常値も大切なのですが、最初は正常心電図波形のPQRST波の形がこんな風であるということを覚えておきましょう。

 

洞調律(サイナスリズム:SR)とは

正常心電図波形が連続で続いている状態を、洞調律(SR)といい、臨床の現場ではサイナスリズムと呼ばれます。

それでは、サイナスリズムの波形を見ていきましょう。

サイナスリズムを判断するためには3つのポイントがあります。
①P波がある
②P波に続き通常幅のQRS波がある。(PQ間隔は正常の範囲内で)
③R-R間隔が一定

これらがそろっていればサイナスリズムであるといえます。

心電図波形が分からないときには、①②③がそろっているのかを順番に確認していきましょう。
どれか1つでもそろっていなければそれはなんらかの不整脈となります。

それでは、サイナスリズムについて理解し、心電図の基礎を学んだ所で次のステップに行きたいと思います。

 

病棟での約9割の心電図波形を判断する方法

本題である約9割の心電図波形を判断する方法について紹介していきたいと思います。

ここでは、一番覚えてほしい不整脈について説明していきます。

その不整脈は心房細動(AF)です!

一番覚えてほしい不整脈である心房細動とはどんな不整脈なのでしょうか?

 

心房細動(AF)とは

心房細動とは、通常は洞結節からしかでないはずの電気刺激が、心房の様々な場所から出てしまうことで生じる不整脈をいいます。

その電気刺激の数は350~500回/分という数です。(正常な洞結節からの電気刺激は60~90回/分程度ですので、どれだけ多くの刺激が出ているのかを分かっていただけたでしょうか?)
数多くの電気刺激が心房内で起きているわけですので、心房は痙攣してるようなかたちになり有効な収縮・拡張はできていません。

この350~500回/分という数の電気刺激が全て心室へと伝導してしまうと大変なことになってしまいますね。ほぼ死んでしまいます。
心臓では、そうならないように房室結節が働いています。

房室結節が、ある程度の数に間引きして心室へ伝導しているのです。
しかし、その間引きする数は350~500回/分と多すぎるため、房室結節がどんなに頑張っても正しいリズム(サイナスリズム)にすることなど不可能です。
そのため、心房細動では頻脈となりやすく、R-R間隔も不整となっています。

どういうことかというと、波形を見てみましょう。

QRS波は心室の興奮(収縮)でしたよね。
この波形では、R-R間隔が不整です。つまりは、心臓は一定の正しいリズムで収縮できていないことになります。
このような状態が心房細動(AF)です。

心房細動(AF)を判断する際のポイントは以下となります。
①P波が見られない
②R-R間隔が不整
③基線が揺れているように見える(心房細動波、f波)

P波が見られず、基線が揺れているように見えるのは、心房が痙攣しているような状態であるためです。

 

まとめ

「何でまとめ?」「まだ不整脈なんて心房細動しか覚えてないぞ?」

なんて思っていませんか?
そんな疑問を抱くのは当たり前だと思います。

しかし、もう「まとめ」なのです。

それは、この記事の内容をしっかりと覚えることができていれば、約9割の心電図波形を読めるようになっているはずです。

どういうことかというと、心電図モニターをつけている患者のほとんどは洞調律(サイナスリズム:SR)と心房細動(AF)であるからです。
この2つの心電図波形さえしっかりと覚えておけば、大体の心電図波形は読めるようになっているはずです。

この2つの波形を覚えた上で、他の不整脈を覚えていくと、さらに心電図に詳しくなっていけると思います。

そして、心電図を勉強していく時に大切なことは、心臓の動きをイメージしながら学ぶことです。

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