循環器の病棟にいれば、ACS(急性冠症候群)はよく耳にする言葉だと思います。
今回は、そんなACS(急性冠症候群)の重症度の判断をするための内容としていきたいと思います。
目次
ACS(急性冠症候群)とは
まず、ACS(急性冠症候群)とはなんでしょうか?
ACS(急性冠症候群)とは、動脈硬化により形成された不安定プラークが破綻し、そこに血栓が生じてしまうことにより冠動脈内腔で急速に狭窄・閉塞してしまう病態をいいます。
つまりは、冠動脈の内腔に生じていたプラークが壊れてしまうことにより、その部分を修復するために血栓ができてしまいます。ただえさえプラークによって狭くなっている冠動脈に、さらに血栓ができてしまうため冠動脈内腔はさらに狭くなってしまいます。また、血栓は急速にできてしまうため、ACS(急性冠症候群)へと進行してしまいます。
ACS(急性冠症候群)は、不安定狭心症(u-AP)・急性心筋梗塞(AMI)・心臓突然死をいいます。
ACS(急性冠症候群)で治療や重症度を判断していくために大切なことがあります。
それは、
・STEMIであるか、NSTEMIであるか
・D2B(Door to balloon)
・急性心筋梗塞(AMI)重症度
です。
STEMIであるか、NSTEMIであるか
ACS(急性冠症候群)は、緊急対応が必要な疾患であり初期に心電図上でSTが上昇しているものをSTEMI(ST上昇型心筋梗塞)、STが上昇していないものをNSTEMI(非ST上昇型心筋梗塞)に分けられます。
STEMIの意味としては、ST(ST部分)E(エレベーション)MI(心筋梗塞)です。エレベーション=エレベーターのように上昇させるという意味のようです。ちなみにNSTEMIのNはNon(非)という意味です。
このSTEMIとNSTEMIを判断するために心電図が重要なのです。
STEMIでは、冠動脈の完全閉塞による心筋壁全層の虚血を示しており迅速な再環流が必要となります。
NSTEMIでは、不安定狭心症を含む非ST上昇型ACSとして低~高リスクに重症度を分類し、そのリスクに沿った治療方針を決定していくことになります。
D2B(Door to balloon)とは
まずは、ACSを疑わせる胸痛の患者さんがいたらどうしますか?
そんなときには
・バイタルサイン測定
・12誘導心電図+モニター心電図
・ルートキープ+採血
・酸素投与
を医師の指示がなくても速やかに行いますね。
そして、心電図の結果STEMIであった場合には、MONAを行っていきます。
Doorは救急外来のドア(扉)、balloonはPCI(経皮的冠動脈インターベンション)による冠動脈の再環流を行うことを意味します。
つまり、STEMIではいかに迅速に再環流を行えるかが予後を大きく左右します。
救急搬送されてから、再環流までは30分で行うことが求められます。
ちなみに、NSTEMIの患者さんでは、
まずは心臓カテーテルを行わずに落ち着いてバイタルサイン測定、その後ショックや心不全の合併症を起こしていないかをチェック、続いてルートキープ+採血を行いCKやトロポニンなどの心筋酵素の上昇がないかを確認します。
しかし、NSTEMIであっても高リスクの場合は心臓カテーテル検査を考慮します。STEMIとは異なり、緊急(30分以内)で行う必要はありません。ただし、NSTEMIも高リスクの場合は急変もありえますし、予後もSTEMIと同様の状態ですので注意が必要です。
高リスクなNSTEMIとは
・ショック状態
・肺うっ血がある
・点滴(ニトロ)を投与しても胸痛が持続している
・CK、CK-MB、トロポニンIが上昇している
・VTやPVCが多発している
状態をいいます。
急性心筋梗塞(AMI)重症度
急性心筋梗塞(AMI)では診断のために、レントゲン、採血、心エコー、心電図など様々な検査を行います。
主に何を見ているの?そんなこと思いませんか?
それは、
・レントゲン:肺のうっ血があるのか、心拡大はあるのか(心臓の大きさ)
・採血:MAX CK(CKの最高値で5000以上で重症、8000以上で最重症です)その他にもWBC↑、Hb↓、CRP↑(20↑は危険)、電解質(特にK)、BS、PLT↓など
・心電図:STEMIかNSTEMIか、どの部位が障害されているか(下壁?前壁?側壁?)
・Killip分類
・PCIが成功しているか、残存病変があるかどうか
・心エコー:EF(駆出率)、asynergy(心臓の壁運動異常)の有無・部位、弁膜症の合併
これらのデータを総合的に判断することが必要です。
全部は分からないと思うのですが、分からないことは医師と情報を共有しながら患者さんの状態を理解しておくことが大切です。
まとめ
患者さんの状態や治療についての理解を深めていくことで
・治療の意味や医師の指示の意味が分かる
・医師の指示を理解することで速やかな対応ができる
・リハビリとの連携もスムーズに行える
・日常生活援助や看護の注意点が分かる
・根拠のある患者指導を行うことができる
・退院後の継続治療のコンプライアンス向上につながる
などの良いことがあります。
また、万が一医師が指示の漏れや間違いをした際にも気づくことができ、医療事故も防ぐことができます。
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