酸素投与することによりCO2ナルコーシスとなってしまうこともあります。
そもそも、CO2ナルコーシスはなぜ起こるのでしょうか?
原因や病態を学んで、CO2ナルコーシスを防いでいきましょう。
目次
CO2ナルコーシスとは
CO2ナルコーシスとは、主にCOPDなどの慢性Ⅱ型呼吸不全患者に起こり、体内に高度なCO2(二酸化炭素)が蓄積することにより高二酸化炭素血症となり、重度の呼吸性アシドーシスを生じ中枢神経系の異常を呈した状態です。
このために、自発呼吸の減弱や意識障害を生じます。
これだけでは、難しいですよね。
それでは、細かい部分に分けながらCO2ナルコーシスを理解していきましょう。
CO2ナルコーシスの病態を理解するために、まずは、呼吸調整の仕組みを学ぶことが近道となります。
呼吸の調整の仕組み
呼吸の調整は、中枢化学受容野と末梢化学受容体の2種類の化学受容体によって行われます。
PaO2やPaCO2、pHなどの血液ガスに異常が生じると、その情報が化学受容体から呼吸中枢へと伝わります。そして、呼吸の深さやリズムを変化させることで肺胞換気量を増減させ、血液ガスのデータを生理的範囲に維持しています。
中枢化学受容野とは
中枢化学受容野は、延髄腹側表層に存在しており、CO2の上昇(pHの低下)を主に感知することで呼吸を調節しています。
日常的には主に、この中枢化学受容野が機能し呼吸調節をしています。
末梢化学受容体とは
末梢化学受容体は、頸動脈小体と大動脈小体に存在しており、O2(酸素)の低下を主に感知することで呼吸を調節しています。
頸動脈小体は総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に分岐する部分に、大動脈小体は大動脈弓に存在しています。しかし、大動脈小体は生理的役割が小さいと考えられているみたいです。
化学受容体の働きの違い
正常時
正常時のイメージは、中枢化学受容野が頑張って働き、末梢化学受容体は休んでいる状態です。
そのため、CO2上昇時に中枢化学受容野が感知し、呼吸中枢を刺激し、呼吸運動を促進し換気量を増大させます。
慢性Ⅱ型呼吸不全時
慢性Ⅱ型呼吸不全患者のように、慢性的に血中CO2濃度が高い状態では中枢化学受容野の感度が鈍くなってしまいます。
そのため、呼吸の調整は末梢化学受容体が行うようになります。血中の著しいO2低下時に末梢化学受容体だけが感知し、呼吸運動を促進します。
イメージでは、末梢化学受容体が慣れない仕事をしていて、更に中枢化学受容野はCO2の上昇に慣れてしまい休んでいる状態です。
CO2ナルコーシス発生の機序
呼吸調節の仕組みが分かった所で、CO2ナルコーシスが発生する機序について学んでいきましょう。
慢性的に血中CO2濃度が高い状態に慣れている慢性Ⅱ型呼吸不全患者に高濃度のO2を投与します。
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中枢化学受容野は、血中CO2の上昇に慣れているので休んでいます。
末梢化学受容体は、高濃度O2によって血中O2が上昇するため、もう呼吸は必要ないと休んでしまいます。
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中枢化学受容野と末梢化学受容体のどちらからも呼吸中枢への刺激がないため、呼吸中枢の働きも抑制されてしまいます。
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呼吸運動の抑制が起こります。
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自発呼吸の減弱・停止が起こります。
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呼吸ができないために、さらに血中CO2濃度が上昇します。
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CO2ナルコーシスの発症
治療・看護
治療としては、高濃度O2を投与していた場合には、O2濃度を下げます。
低酸素血漿が改善しない場合には、NPPVの併用や、意識障害により呼吸状態が不安定な場合には気管挿管し人工換気を行います。
看護としては、高濃度O2を投与する前に、患者の既往歴などの情報を得る必要があります。また、低流量(ローフロー)システムの特徴を理解して管理する必要があります。
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