酸素療法での低流量システムの種類と特徴‐カヌラ・マスク・リザーバー付きマスクについて

酸素療法は、低流量(ローフロー)システムと高流量(ハイフロー)システムに分けられる話を以前にしました。

今回は、その中での低流量(ローフロー)システムについて詳しく紹介していきたいと思います。

酸素療法での高流量システムの種類と特徴‐ベンチュリーマスク・ネブライザー付き酸素吸入器

酸素療法の種類と目的とは

 

目次

低流量(ローフロー)システムとは

低流量(ローフロー)システムとは、供給酸素濃度100%の酸素を患者の吸気量よりも少ない流量で投与することにより、不足分の酸素を患者自身の呼吸によって補うものです。簡便で経済的かつ、侵襲も少ないことから病院などの臨床から在宅まで様々な場面で使用されています。

そもそも、「低流量」とはどのくらいでしょうか?

 

それは、マスクから供給される総流量が患者の一回換気量(一回分の呼吸で得られる換気量:正常は約500ml)よりも少ないということを意味しています。

酸素投与の際に「100%の酸素濃度」で「設定された流量」を患者に投与しますが、、酸素供給量が患者の一回換気量以下であるため、不足分は大気中の空気を吸う事で補っています。そのため、患者の吸入する酸素濃度は「100%の酸素濃度」よりも低下することになります。

 

低流量(ローフロー)システムで得られる酸素濃度とは

低流量(ローフロー)システムでは、患者の吸入する酸素濃度は「100%の酸素濃度」よりも低下することになります。

具体的には、患者の呼吸状態によってどのくらいの変化があるのでしょうか?
例題を通して考えていきたいと思います。

例題①:呼吸回数15回/分の患者に対して酸素2L/分投与します。その際の実際に患者が投与されている酸素濃度はどのくらいでしょう?(一回換気量は500mlとします。)

ここで、注意してみてもらいたいことは正常な呼吸では1秒吸って、2秒吐いていることになります。呼吸で吐いている2秒の間にも酸素投与は行われているのです。

このことはI:E比と呼ばれ、正常は1:2となります。Iは吸気時間、Eは呼気時間で、呼気時間の方が長くなります。

そのため、この場合は2L/分の酸素投与を行っていても実際に酸素を吸えている量は、2Lの1/3程度の0.66L/分だけなのです。

この患者の場合の分時間気量は7.5L(一回換気量500ml×呼吸数15回/分)であるため、先ほどの0.66L/分を引いた6.84L/分は大気中の空気(酸素濃度約21%)を吸っていることになります。

それでは、実際の投与されている酸素濃度を計算していきます。
{100(%)×0.66(L/分)+21(%)×6.84(L/分)}÷10.0(L/分)
=(66+143.64)÷7.5
≒28%

正常な呼吸で分時間気量7.5Lの人が2L/分の酸素を吸入すると酸素濃度約28%のガスを吸うことになります。

 

続いて、呼吸状態の悪い(頻呼吸)である場合を考えていきましょう。

例題②:呼吸回数30回/分の患者に対して酸素2L/分投与します。その際の実際に患者が投与されている酸素濃度はどのくらいでしょう?(一回換気量は500mlとします。)

この場合には、頻呼吸の状態ですが、吸気時間と呼気時間の比率(I:E比)は同様です。

そのため、2L/分の酸素投与を行っていても実際に酸素を吸えている量は、2Lの1/3の0.66L/分です。

この患者の場合の分時間気量は15.0L(一回換気量500ml×呼吸数30回/分)であるため、先ほどの0.66L/分を引いた14.33L/分は大気中の空気(酸素濃度約21%)を吸っていることになります。

それでは、実際の投与されている酸素濃度を計算していきます。
{100(%)×0.66(L/分)+21(%)×14.33(L/分)}÷15.0(L/分)
=(66+300.93)÷15.0
≒24%

この場合では、同じ2L/分の酸素を吸入していても酸素濃度約24%のガスを吸うことになります。

 

これは例として計算しましたが、同じ2L/分の酸素投与でも28%⇒24%と酸素濃度は低くなってしまいます。

このため、呼吸状態の悪く、厳密な呼吸管理が必要な患者には不適応になります。

 

適応

低流量(ローフロー)システムは、比較的規則正しい呼吸パターンで、高流量(ハイフロー)システムを用いなくてもいいようなⅠ型呼吸不全の患者などで用います。

 

低流量(ローフロー)システムの種類と特徴

ネーザル(経鼻)カヌラ

鼻から酸素を供給する器具で、安価で簡便です。

装着したままでも食事や会話が可能ですか、酸素ガスが直接鼻腔にぶつかり鼻粘膜が乾燥したり、口呼吸の患者では効果が低いといった特徴があります。

通常は5L/分以下の酸素流量で使用します。

6L/分以上で投与を行っても吸入酸素濃度の上昇があまり期待できないため。また、鼻粘膜の乾燥や鼻痛などが生じてしまうため。

酸素吸入濃度の目安

1L/分 24%
2L/分 28%
3L/分 32%
4L/分 36%
5L/分 40%
6L/分 44%

※20+〇L/分×4と覚えておけばいいですよ。

 

単純フェイスマスク(簡易酸素マスク)

酸素マスクは酸素濃度を調節できないマスクで、マスクタイプでは最も普及しています。

鼻と口をすっぽり覆う形になるため装着に不快感を感じる患者もいます。しかし、患者自身の呼気に含まれる湿気によって鼻腔口腔粘膜が乾燥しにくいという利点もあります。

通常は5L/分以上の酸素流量で使用します。

4L/分以下ではマスク内に溜まった呼気ガス(二酸化炭素)を再吸入してしまわないようにするため。5L/分以上にすることで、マスク内の呼気ガスをマスク外に排出することができる。

酸素吸入濃度の目安

5L/分 40%
6L/分 40~50%
7L/分 50~60%
8L/分 60%

※(〇L/分-1)×10と覚えておけばいいですよ。

 

リザーバー付き酸素マスク

リザーバー付き酸素マスクは呼気中にリザーバーバックに酸素を貯め、吸気時にリザーバーに溜まった酸素とチューブから流れてくる酸素を吸入します。そうすることで60%以上の高濃度酸素の吸入を行えます。そのため、リザーバーが十分に膨らんでいる状態で使用する必要があります。

リザーバーとマスクの間に一方弁がついており、吸気時に大気中の空気を吸入しにくい構造になっている。(一方弁がないものもある。)

患者の吸気量が多いと、リザーバーに貯まった酸素とチューブから流れてくる酸素以上は吸入できなくなってしまうため、マスクの一方弁を外し大気中の空気も吸入できるようにします。

通常は5L/分以上の酸素流量で使用します。

・呼気の再吸入を防止するため。
・リザーバーバック内に十分な酸素を貯めるため。

酸素吸入濃度の目安

5L/分 50%
6L/分 60%
7L/分 70%
8L/分 80%
9L/分 90%
10L/分 91%以上

※〇L/分×10と覚えておけばいいですよ。

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