目次
口腔・鼻腔内吸引とは
吸引は自己で有効な喀痰排出などができない患者の場合に、カテーテルを用いて口腔・鼻腔内に貯留する分泌物を除去する方法である。また、吸引した分泌物から患者の状態を把握することもできる。
目的と適応
目的
- 口腔、鼻腔内の分泌物、異物を除去する。
- 気道閉塞、呼吸困難を予防し、肺換気を改善する。
- 気道浄化により、無気肺や肺炎などの呼器合併症を予防、改善する。
- 喀痰検査の検体採取。
適応
- 自己での喀痰排出が困難な場合
- 口腔、鼻腔内に分泌物が過剰に貯留し、粘稠度が高い場合
- 喀痰細菌検査、喀痰細胞診検査の必要がある場合
- 気管切開、気管挿管中の場合
必要物品
- 吸引カテーテル (10Fr~14Fr)
- 吸引器
- 吸引瓶
- コネクティングチューブ
- 使い捨て手袋
- マスク
- 水
- 紙コップ
- パルスオキシメーター
- 聴診器
手順
1.患者のアセスメントを行い、吸引の必要性を判断する。
聴診や触診により分泌物の貯留の確認、呼吸状態、呼吸音、SPO2などの全身状態を把握しておく。
2.目的を説明し同意を得る。
吸引は苦痛を伴うため、患者の不安を取り除き、よりよい協力を得る。
3.吸引器を準備する。コネクティングチューブを接続し、スイッチを入れ、吸引できるか確認する。
吸引チューブを指で押さえ、圧力計の目盛りが作動しているか、作動音の異常が無いかも合わせて確認する。
4.手指消毒をし、マスク、使い捨て手袋を装着する。
6.吸引カテーテルを清潔操作で取り出し、コネクティングチューブと接続する。
7.少量の水をすって、吸引圧の確認、カテーテルの滑りをよくしておく。
機器の機能を確認すると同時にカテーテルとチューブの内側を潤滑させる。吸引カテーテルの表面は乾燥しており滑りを良くしておかなければ粘膜損傷につながるおそれがある。
8.吸引圧は20kpa以下に調節する。
過度の陰圧は患者に苦痛を与える。また鼻咽頭と気管の粘膜が損傷するおそれがあり、重度の低酸素症を誘発する。
9.吸引カテーテルを接続部の根元をおさえるように折り、吸引圧をかけずに、丁寧に素早く吸引カテーテルを患者の口腔内または鼻腔内に挿入する。
カテーテル挿入時に気管に吸引圧を加えると、周囲の粘膜にカテーテルが貼り付いてしまい粘膜の損傷する可能性がある。また、気管内にある空気を吸引することによる低酸素症の危険が増加する。
10.間欠的に吸引を10~15秒以内で行い、カテーテルを指でこすり合わせ回転させながら吸引する。
間欠的吸引とカテーテルの回転によって、粘膜の損傷を防ぐ。15秒以上の吸引は、通常、低酸素血症または迷走神経負荷により心肺機能を不安定化させる原因となってしまうため避ける。
11.水を吸い、吸引カテーテルを洗浄する。
カテーテル内分泌物を除去することにより、微生物の伝播を減少させ清潔を保つと共に、吸引圧を維持する。
12.必要に応じて呼吸状態を観察したうえで吸引を繰り返す。
13.吸引器を停止させ、吸引管とカテーテルの接続を外す。
14.カテーテルをまとめて握り、カテーテルを包み込むように手袋をはずし、紙コップと手袋を破棄する。
分泌物に含まれる微生物の伝播を防ぐ。
15.手指消毒をし、患者の全身状態、呼吸状態、バイタルサインを観察する。
16.使用した物品を適切な方法で片付ける。
17.処置の内容と結果を記録する。
動画
手順と動画で若干異なる部分もありますがご容赦ください。
動画内では、吸引カテーテルを消毒し再使用しておりますが、ディスポのものを使用している施設では使用後破棄して下さい。
注意事項
- 口腔・鼻腔の両方で吸引を行う場合は、口腔吸引後、鼻腔吸引を行う。
- 鼻腔吸引の場合:カテーテル挿入の長さは15~20cmを目安とする。
- 口腔吸引の場合:カテーテル挿入の長さは5~10cmを目安とする。
分泌物は線毛運動により咽頭部に移動するため、咽頭部に貯留しやすい。そのため、カテーテルは咽頭部までの距離の目安で挿入する。 - 口腔吸引の際には、口蓋垂を刺激しないよう行う。口蓋垂を刺激することにより嘔吐反射が誘発されてしまう。
- 吸引圧は通常、13~20kPa(100~150mmHg)程度で実施する。
- 無菌領域から清潔領域へは同じカテーテルを使うが、清潔領域から無菌領域へは同じカテーテルは使わない。そのため、口腔・鼻腔吸引に用いたカテーテルで気管吸引は行わない。
禁忌
- 気道過敏
- 出血傾向で吸引により鼻腔や気道粘膜から出血の危険がある場合
kPaとmmHgの換算
kPa | mmHg |
7 | 50 |
13 | 100 |
20 | 150 |
26 | 200 |
33 | 250 |
※だいたい6~7kPa上昇するごとに50mmHgの圧が上昇する。
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