今回は急性心筋梗塞(AMI)の中でも注意してほしい、下壁と前壁の梗塞の症状と看護についての記事です。
目次
急性心筋梗塞を疑ったらまずやるべきこと
どこの梗塞かに関わらず、胸痛を強く訴え、急性心筋梗塞を疑う場合には医師の指示がなくてもルートキープを行うと共に、MONAの準備を行わなくてはなりません。
MONAとは
・M⇒モルヒネ
・O⇒酸素投与
・N⇒ニトログリセリン
・A⇒アスピリン
ですね。
下壁の梗塞の場合
下壁の心筋梗塞の場合、12誘導心電図上ではⅡ、Ⅲ、aVFでSTの上昇がみられます。
下壁の心筋梗塞で心臓カテーテル検査を行う際には、徐脈に注意が必要ですね。
それは、下壁の心筋梗塞は右冠動脈(RCA)に病変がある(一部は左回旋枝:LCXも含みますが・・・)ためです。右冠動脈は刺激伝導系の栄養血管であるため、ここが障害されてしまうと房室ブロック(AVB)を起こす可能性が高くなります。
そのため、アトロピンなどの徐脈性不整脈に対する薬剤を準備しておく必要があります。
心臓カテーテル検査が無事に終了後は、もう大丈夫かというと、そうではありません。
次は、カテーテル後の合併症に注意して観察する必要があります。
一般的な心筋梗塞の合併症の他に、右室梗塞に注意しましょう。
右室梗塞とは
それでは、右室梗塞とはどのような状態なのでしょう?
右冠動脈からは右室枝(右室の栄養血管)が出ており、特に右冠動脈起始部の病変では右室梗塞を合併することが多くあります。
右心室が梗塞を起こしてしまうと、右心室の収縮力が低下してしまいます。そうなると全身から戻ってきた静脈血を肺循環に送り出すことができなくなります。
↓
肺循環から左心房への血液流出が減少し、左心室への血流が減少します。
↓
左心室から全身に血液を送ることができなくなり、循環血液量の低下により、血圧が低下し、尿量も減少します。
↓
肺循環に血液を送り出せずにいる右心室に血液が溜まります。そして、右心房にも血液が溜まり、やがて全身のうっ血をきたします。
↓
身体症状として、頸静脈の怒張、浮腫の増強、肝うっ血などの右心不全の症状が出現します。
これが、右室梗塞の状態です。
それでは、右心不全の症状が出現し浮腫が増強した場合にはどうすればいいでしょう?
点滴を絞りinを少なくしますか?強い利尿剤をかけますか?
点滴を絞って、強い利尿をかけてしまうと、右心室の血液循環量が減少し、更に肺循環の血液量が減少してしまいます。それに伴い、更なる
血圧低下・腎血流の低下を招いてしまいます。
では、どうすればいいのか?
それは、一定量の補液を行い血液循環量を確保しながら、少量のカテコラミン(ドパミン塩酸塩)の投与を行います。
低用量のドパミン塩酸塩は、腎血流量を増加させ、それにより利尿を促す作用があります。
前壁の梗塞の場合
前壁の心筋梗塞では、12誘導心電図のV2、V3、V4でのST上昇がみられます。
前壁は左室収縮による心拍出のメインを担っているため、この部位の梗塞ではショックになるリスクが非常に高いです。緊急PCI(経皮的冠動脈インターベンジョン)での治療に成功しても、急激なショックのリスクがあるため、そうなった場合は循環補助としてIABP(大動脈バルーンパンピング)やPCPS(経皮的心肺補助装置)が必要となる可能性が高いです。
しかし、そのような循環補助を行っていても、前壁の心筋梗塞では致死的不整脈や心破裂の合併が多くみられるため、慎重な観察を継続していく必要があります。
心破裂は、高齢ほど起こりやすく、女性に多く生じます。
1枝病変(3本の冠動脈の内の1本のみに梗塞が生じている状態)で、特に左前下行枝(LAD)領域末梢の前壁または、側壁の病変で生じやすいです。
心筋壊死領域で非薄化した左室拡張領域で、梗塞中央部よりも正常領域との境に発症しやすいです。それは、梗塞部は壊死しているため組織が脆くなっていますが、正常領域では通常通り心臓は動いています。そうなると、壊死領域と正常領域で動きの差が生じてしまい、蝶番のように何度も動くと壊死領域の組織が破綻して、心破裂となってしまいます。
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