目次
【病態】
A群溶血性連鎖球菌は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こします。
A群連鎖球菌感染は、いずれの年齢でも起こり得るが、幼稚園から小学校低学年の小児に咽頭炎として発症することが最も多いです。
日常よくみられる疾患として、咽頭炎の他、膿痂疹、蜂窩織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱があります。
これら以外にも中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などを起こします。
合併症としては感染後10~20日で急性糸球体腎炎を伴うことがあり、リウマチ熱発症の原因となることから、小児科領域では重要な感染症とされています。
さらに、敗血症性ショックをきたす劇症型溶血性連鎖球菌感染症(連鎖球菌性毒素性ショック症候群)は重症な病態として問題です。
感染は飛沫、接触感染で2~5日潜伏期間をおいて発症します。感染性は急性期に最も強く、その後徐々に減弱します。
急性期の感染率については、兄弟での感染が最も高率である。
3歳未満の小児がA群連鎖球菌に感染することは少ないが、感染すると微熱、鼻汁、リンパ節腫脹など非定型的な症状が長く続き、1ヶ月以上にわたることがあります。
【症状・診断】
突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐を伴います。
咽頭壁は浮腫上で扁桃は浸出を伴い、軟口蓋の小点状出血あるイチゴ舌がみられることがあります。
A群連鎖球菌感染症の診断は、臨床症状、地域での流行状況または患者との接触歴、咽頭培養または迅速診断キットによる抗原の提出、抗体検査を適切な組み合わせで行います。
典型的なA群連鎖球菌による咽頭炎では頭痛、腹痛、嘔吐で始まり、続いて40℃前後の発熱がみられ、咽頭痛を訴えます。
咽頭と扁桃は著しく発熱し、軟口蓋には出血斑を認めます。扁桃には浸出液がみられ頚部リンパ節は腫脹し圧痛があります。
これらの症状と所見が幼稚園児か小学校低学年児にみられて、咳嗽などそのほかの上気道感染症状がなければ本症の可能性が高いです。ただし、典型的な症状を呈するのは30%程度です。
【治療】
治療の目的は、現在の優勢感染症を治療すること、急性糸球体腎炎やリウマチ熱の合併を予防すること、家庭内や集団での流行を防ぐことです。
A群連鎖球菌感染症が診断されたら十分な抗菌剤治療を行います。
化膿連鎖球菌にはペニシリン耐性株がないのでペニシリン系薬剤が第一選択です。
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