今回は心室頻拍(VT)についてです。
目次
心室頻拍(VT)とは
VTとは、心室内から連続して発生した刺激によって、心室が連続で収縮した状態をいいます。
本来の心筋収縮は刺激伝導系に沿って伝わった電気刺激により、心室は左右同時に収縮し、有効な血液の駆出を行っています。
しかし、VTでは先に刺激が発生しした側の心室が収縮し、その後反対側の心室に刺激が伝わるためQRS波の幅は広くなります(ワイドQRS)。
心室は収縮をしているのですが、左右の心室が交互に収縮するため、有効な血液の駆出ができていない状態です。
これはPVCでも同様のことが言えますね。
VTはPVCが連続して起こっているようなものなのです。(PVC3連発以上はVTと表現されます。)
このような、心室収縮が起こっていても心拍数がゆっくりであれば、循環動態は悪化しますが心拍出量は維持されます。
しかし、ある程度以上の頻脈になると、それは心臓が空うちしているような状態になり血液を全身に送ることができなくなります。
これをpulseless VT(脈なしVT)といい、心停止の状態となり非常に危険な状態です。
代表的な症状として、動悸・呼吸困難・血圧低下・めまい・失神などがありますが、PVC3連発のみの場合などは無症状なこともあります。
それでは波形です。
判断のポイントは
①幅の広いQRS波(ワイドQRS)が連続している
②ほとんどの場合はP波を確認できない
③R-R間隔はほぼ一定
VTが30秒以上持続するものを持続性心室頻拍(SVT)、
30秒以内のものを非持続性心室頻拍(NSVT)といいます。
VTをみたときの対応
VTは危険度大です。
この波形をみたときはすぐに患者さんのもとへと駆けつけ、意識と脈を確認しましょう。
意識、脈があれば、バイタルサインと全身状態を観察し、早急に医師に報告してください。
意識、脈がなければ、直ちに心肺蘇生を行う必要があります。スタッフを集め直ちに対応しましょう。
意識、脈があるにしても、ないにしても電気的除細動(またはAED)は準備しておいたほうがいいでしょう。
治療
・電気的除細動を行います。
・薬剤の投与としては、リドカイン、アミオダロンなどが使用されます。
・根治治療としてカテーテルアブレーションを行ったり、
VT発生時に自動で除細動が実施されるように埋め込みがた除細動を挿入することがあります。
トルサード・ド・ポアンツ(TdP)
トルサード・ド・ポアンツはQT延長がある場合に発生リスクの高いVTの一種です。
通常のVTは単形性ですが、トルサード・ド・ポアンツは多形性で波形の波が大きくなったり小さくなったりすることが特徴です。
R on Tと呼ばれるPVCを機に発生します。
放置しているとVFへと移行することもあり、心肺蘇生が必要な非常に危険な不整脈となります。
歯磨きVT
余談になりますが、VT様の波形が出ていて患者さんのもとへといったときに、その患者さんは何事もなく歯磨きをしていた。
そんな体験をしたことはないでしょうか?
そして、先輩は「歯磨きVTだね」と言っています。
私も新人時代はなんだろうと不思議に思いました。
これは、歯磨きでの大胸筋の規則的な運動による筋電図をモニターがキャッチしているために起こります。
歯磨き以外でも上肢を規則的に動かすような運動をしているときに起こることもあります。
食後などに多く起こりますね。
しかし、歯磨きVTだとは思わず、患者さんの様子を見に行きましょう。
もしかしたら本当にVTが起きているかもしれませんよ。
必要に応じて筋電図の入りにくいNASA誘導などに変更するなどの対応を行いましょう。
しかし、誘導変更によって波形が判断しにくくなっては意味がありません。
その患者さんにあった誘導方法を選択していきましょう。
ちょっと気になったのですみません。
Tdpの「放置しておくとVTに移行することがあり〜」はVTでなくVFでは?
ご指摘の通りTdpはVTの一種であり、放置するとVFへ移行する可能性があります。
記事の方を訂正致しました。ご指摘ありがとうございます。