房室ブロックは、心房と心室の刺激伝導(主に房室結節)に何らかの異常があるものをいいます。
波形としてはPQ間隔に変化として現れます。
房室ブロックはⅠ~Ⅲ度に分類されており、Ⅰ度から順番に説明していきます。
目次
Ⅰ度房室ブロック
Ⅰ度房室ブロックとは
Ⅰ度房室ブロックは洞結節から出た刺激が心室に到達するまでの時間が遅れてしまっている状態です。
心房が収縮してから心室が収縮するまでの時間が遅くなってしまいますが、循環動態に大きな変化が見られることはありません。
通常は無症状です。
それでは波形です。
判断のポイントは
①P波があり、それぞれの波の形は正常
②PQ間隔が0.2秒以上となっている
③PQ間隔は毎回一定
Ⅰ度房室ブロックをみたときの対応
Ⅰ度房室ブロックの危険度は小です。
特に対応する必要はありません。
もともとがSRであった場合には、急ぐ必要はありませんがDrへ報告しておきましょう。
治療
特に治療する必要はありません。
しかし、Ⅰ度房室ブロックは副交感神経(迷走神経)の過緊張によって起こることもあります。
また、その他の心疾患や薬剤の影響が原因で起こる場合もあります。
その場合は、その原因の除去のために対応することもあります。
Ⅱ度房室ブロック
Ⅱ度房室ブロックとは
Ⅱ度房室ブロックは
ウェンケバッハ型(モビッツⅠ型)とモビッツⅡ型に分けられます。
それぞれ分けて説明していきたいと思います。
ウェンケバッハ型
ウェンケバッハ型(モビッツⅠ型)とは
Ⅱ度房室ブロックは洞結節から出た刺激が心室へと達しないことがある状態です。
ウェンケバッハ型は別名モビッツ1型とも言いますが、ほとんど使うことはありません。
ウェンケバッハ型は心電図では徐々にPQ間隔が延長し、ある一定PQ間隔が延長したところでQRS波が欠落してしまいます。
しかし、数拍に1回QRS波が欠落しますが、逆に言えば数拍に1回しかQRS波は欠落することはありません。
欠落した後の、次のP波には必ずQRS波が出現します。
それでは波形です。
判断のポイントは
①P-P間隔は一定
②PQ間隔が徐々に延長し、一定の延長になるとQRS波が欠落する。これが繰り返される。
ウェンケバッハ型の房室ブロックの多くは、迷走神経の緊張など機能的な異常と考えられています。
ウェンケバッハ型をみたときの対応
ウェンケバッハ型は危険度小です。
数拍に1回の規則的なQRS波の欠落はありますが、そのほかの心拍は保障されています。
自覚症状が無ければ緊急で対応する必要はありません。
急ぐ必要はありませんがDrへ報告しましょう。
治療
基本的には比較的安全な不整脈であるため治療の必要はありません。
モビッツⅡ型
モビッツⅡ型とは
Ⅱ度房室ブロックであるモビッツⅡ型も、ウェンケバッハ型と同様に洞結節から出た刺激が心室へと達しないことがある状態です。
モビッツⅡ型は、PQ間隔に変化はありません。
しかし、突然QRS波が欠落してしまうのです。
モビッツⅡ型は器質的異常(心筋の壊死や炎症など)が原因で起こることが多いとされており、高度房室ブロックやⅢ度房室ブロックへと移行する可能性があり注意が必要な不整脈です。
それでは波形です。
判断のポイントは
①PQ間隔は一定
②P波が発生しているにもかかわらず、突然QRS波が欠落する
③QRS波が欠落するタイミングはわからない
高度房室ブロックという言葉はあまり聞き慣れないかも知れません。
私も、心電図を勉強し始めてから知りました。
そんな、高度房室ブロックについても説明していきます。
高度房室ブロックとは
高度房室ブロックとは、モビッツⅡ型の重症度別の呼び方です。
非常にややこしいですね。
モビッツⅡ型のうち、PQRSの伝導比が2:1以下のものを高度房室ブロックといいます。
つまり、洞結節からの電気刺激が半分以下しか伝わらないものをいいます。
字だけでは分かりにくいですね。
実際の波形をみながら覚えましょう。
これが、高度房室ブロックです。
2回のP波に対して、QRS波が1回欠落しています。(このようなものは2:1高度房室ブロックと呼ばれます。)
先ほど説明したように、洞結節の電気刺激は半分しか心室へと伝わってないのですね。
そして、次です。
3:1高度房室ブロックです。
これは、3回のP波に対して、QRS波が2回欠落しています。
3:1以上では心拍数も減少し非常に危険です。QRS波が欠落し続ける場合もあります。
医師や文献によって2:1房室ブロックは高度房室ブロックではなく、3:1からが高度房室ブロックであるという場合もあります。その場合は2:1のものは「2:1房室ブロック」とあらわします。
施設の医師や上司にあわせて報告などして頂ければと思います。どちらが正しいのかは申し訳ありませんが不明です。
モビッツⅡ型をみたときの対応
モビッツⅡ型・2:1高度房室ブロックの危険度は中、
3:1以上の高度房室ブロックの危険度は大です。
モビッツⅡ型は、QRS欠落の予想がつかずアダムス・ストークス発作を起こすリスクも高い危険な不整脈です。
特に、高度房室ブロックはそのリスクが高いです。緊急処置が必要になることもあります。
速やかに患者の状態を観察しDrへ報告しましょう。
治療
・緊急の場合は一時的に体外式ペースメーカーが必要になる場合があります。
・モビッツⅡ型で、自覚症状がある場合は植え込み型ペースメーカーの適応となることがあります。
・高度房室ブロックは、ほとんどの場合に植え込み型ペースメーカーの適応となります。
・一時的な原因で発生している場合には、その原因を探し治療します。
Ⅲ度房室ブロック
Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)とは
Ⅲ度房室ブロックは、心房から心室への電気刺激が完全に遮断された状態です。
そのために、心房と心室はバラバラに収縮をしてしまっている状態です。
通常では運動に伴い、心拍は上昇し必要な循環血液量を保っていますが、それもできなくなります。
有効な心拍出量が得られず、心臓に大きな負担がかかり、循環動態が悪化してしまいます。
最悪の場合、アダムス・ストークス発作のために意識消失してしまいます。
それでは波形です。
判断のポイントは
①P-P間隔は一定
②R-R間隔は一定
③P波の後にQRS波は見られず、それぞれが独立している。
波形をよくみると、P-P間隔とR-R間隔は異なりますね。
R-R間隔のほうが、間隔が長くなっています。
これは、刺激伝導系の自動能が関係しているためです。
以前にもお話しましたが刺激伝導系には自動能があります。
それは、洞結節で一番早く、房室結節以下へいくほどだんだん遅くなっていきます。
Ⅲ度房室ブロックでは伝導が遮断された状態ですが、洞結節や房室結節などのそれぞれの機能は保たれています。
洞結節の刺激であるP-P間隔は短めで、
房室結節以下の刺激であるR-R間隔は長めになってしまします。
刺激が伝導してこないために、房室結節以下では洞結節が動いていないと勘違いしてしまうのですね。
そのために、Ⅲ度房室ブロックでは徐脈傾向となってしまいます。
Ⅲ度房室ブロックを見たときの対応
Ⅲ度房室ブロックの危険度は中です。
突然に起こったのならば、すぐにバイタルサインや意識状態を観察しDrへと報告しましょう。
そのときには、同時に12誘導をとるとよいでしょう。
めまいなどの症状が出現する可能性が高いため、Drがくるまでの間はベッド上で安静にしてもらいましょう。
治療
・何らかの原因による一時的なものであれば原因除去につとめます。それまでの間は一時的ペースメーカーで対応します。
・一時的でないものには、基本的に植え込み型ペースメーカーの適応になります。
まとめ
房室ブロックは、心房と心室の刺激伝導(主に房室結節)に何らかの異常があり徐脈になります。
その原因としては、迷走神経によって起こる場合が多いとされています。迷走神経は夜間に活発になるため、夜間に発作を起こしやすいとされています。実際、働いている場面でも夜間・就寝時に徐脈となる患者さんは結構いますよ。
房室ブロックは、Ⅰ~Ⅲ度に分類され、I度房室ブロック・Ⅱ度房室ブロック(ウェンケバッハ型)は健康な人にもみられます。しかし、モビッツⅡ型、高度房室ブロック、Ⅲ度房室ブロックは、アダムス・ストークス発作のために意識消失をきたしやすく危険です。また、心室細動へと移行する危険性もあります。
それぞれの特徴を踏まえて看護を行っていきましょう。
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