房室ブロックと洞不全症候群(SSS)はどちらも徐脈性の不整脈です。
心電図上で徐脈であることは分かるのですが、房室ブロックと洞不全症候群(SSS)のどちらかで迷うこともあると思います。
この違いには、P波の後のQRS波の出現のしかたを見分けることが大切です。
それでは、房室ブロックと洞不全症候群(SSS)それぞれの不整脈の説明からしていきたいと思います。
目次
房室ブロックとは
房室ブロックは、心房と心室の刺激伝導(主に房室結節)に何らかの異常があるものをいいます。波形としてはPQ間隔に変化として現れます。
房室ブロックには1~3度まで分類されており、1度よりも3度が重症となります。
それぞれを詳しく説明していると長くなってしまいますので下記のリンクを参照してみて下さい。
房室ブロックではP波は必ず規則的に存在します(P-P間隔が等しくなります)。その後に続くQRS波が出るかどうかが問題となりますね。
洞不全症候群(SSS)とは
洞不全症候群も、房室ブロックと同様にⅠ~Ⅲ型に分類されており、Ⅰ型よりもⅢ型の方が重症度が高くなります。
洞不全症候群は、刺激伝導系の洞結節に異常がある状態です。
こちらも説明していると長くなってしまいますので、下記のリンクを参照して頂けると助かります。
洞不全症候群は、洞結節に異常がある状態ですのでP波の出現に問題が生じています。基本的にはP波が規則的に出現するのですが、突如P波が出現しなくなります。そのため、ポーズと呼ばれる心臓の収縮がおきない状態が生じてしまいます。
波形で見る違い
言葉だけでは分かりにくいと思いますので、代表的な波形を比べてみましょう。
上の波形を見比べてみて下さい。上が房室ブロックのモビッツ2型、下が洞不全症候群の洞房ブロックと呼ばれる状態です。
それぞれのP波の発生と、QRS波の発生を見比べてみると違いが分かってくるでしょうか。
房室ブロックではP波が出現していますが、時折QRS波が欠落します。心房と心室の刺激伝導(主に房室結節)に何らかの異常があるため、電気刺激を伝導することができない時があるのですね。
洞不全症候群では、突然P波が欠落します。刺激伝導系の洞結節に異常がある状態であるため、洞結節での電気刺激の発生自体が起きない時があるのですね。P波が出ないのではその後のQRS波は出るはずがありませんね。
1度房室ブロックと洞不全症候群Ⅰ型
気づいている方もいるかもしれませんが、1度房室ブロック・洞不全症候群Ⅰ型のこれらの不整脈についてはP波やQRS波の欠落はありません。
上の波形が1度房室ブロック、下の波形が洞不全症候群Ⅰ型です。1度房室ブロックではPQ間隔の延長、洞不全症候群Ⅰ型では心拍数の減少があるのみです。
少し紛らわしいかもしれませんが、これらについてはこういうものだと覚えてもらえばいいと思います。
1度房室ブロックでは心房と心室の刺激伝導(主に房室結節)に何らかの異常があるため、伝導が遅れてしまいます。洞不全症候群Ⅰ型では刺激伝導系の洞結節に異常があるため、電気刺激の発生が起こりにくくなってしまっているのですね(健常者でも洞不全症候群Ⅰ型は起こる可能性もありますが)。
見分け方のまとめ
房室ブロックは心房と心室の刺激伝導(主に房室結節)に何らかの異常があるもの、洞不全症候群は刺激伝導系の洞結節に異常がある状態ということをしっかりと覚えておきましょう。
そうすれば、突然のP波の発生やQRS波の欠落についてアセスメントしていくことができると思います。
房室ブロックではP波に続くQRS波が出るかどうかが問題です。
洞不全症候群ではP波の出現に問題が生じています。
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