人工呼吸器を装着中の患者では、カフ圧を調節しますよね。
しかし、なぜカフ圧を調節する必要があるのか?カフ圧を上げすぎるとどうなるのか?などなど・・・。
実は、分からずに行っていることも多いのではないでしょうか?
たかがカフ圧ではありません。カフ圧の調節は大切なことなのです。
今回は、カフ圧の調節について学んでいきましょう。
目次
カフ圧の役割
期間チューブのカフ圧の役割は、気管壁と挿管チューブの間のリークを防止することです。
この気管壁と挿管チューブの間にリークがあると、気管分泌物や吐物を誤嚥して人工呼吸器関連肺炎(VAP)の原因になります。また、人工呼吸中のエアリークの原因ともなり、換気量の低下を引き起こします。
カフ圧観察の必要性
カフは上図のような風船のような形状です。
カフは、経時的な自然脱気の他、体位変換や気管吸引などによって変動します。
そのため、定期的なカフ圧の調節が必要となります。
また、カフ圧は高すぎると気管壁面に与える圧が上昇します。そうなると、気管壁を損傷する可能性があります。
カフによる気管壁にかかる圧力を直接的に測定する方法がないため、カフ圧を調節することが重要になります。
適正なカフ圧とは
カフ圧は20~30cmH2Oの間で維持することを推奨されています。
これは、気管壁の動脈圧が34~40.8cmH2Oであることに由来しています。この動脈圧よりも高い圧力がかかることで血流の遮断があり、壊死してしまうことが考えられるためです。
また、カフ圧が低すぎても、カフよりも下の気道内に細菌病原体が漏れることによる呼吸器関連肺炎(VAP)を予防するために20cmH2O以上が必要とされています。
カフ圧調節のポイント
適正なカフ圧を調節するために、覚えておくことをオススメします。
①カフ圧計を脱着時にカフ圧が低下する
カフ圧は、カフ圧計を装着する際や、外す際に低下します。
それは、パイロットバルブに装着する時点でのカフ圧計は0cmH2Oであるため、圧が平衡になろうとしてカフ圧内からカフ圧計内へと圧が移動するためです。
カフ圧計を外す際には、圧が2~3cmH2O低下するとされています。
そのため、20cmH2Oで調節してしまうと、実際には17~18cmH2O程度となってしまうので注意が必要です。
30cmH2O程度で調節すると、ちょうどいい位になりますよ。
②カフの自然脱気を考慮する
新品の気管チューブであっても、カフ圧は自然と減少していきます。
約8時間で5cmH2O低下するとされています。
③口腔ケア前にはカフ圧を調節する
カフ圧を上げるだけでは、気管分泌物などの垂れ込みを完全に防ぐことはできませんが、口腔ケア時などは垂れ込みが起こりやすいためカフ圧の調節が必要です。
以前は口腔ケア時だけ、カフ圧を適正値以上に上げて行われていました。
しかし、どんなにカフ圧を上げても、カフを膨らました際に生じるひだを伝って下気道に垂れ込んでしまうため効果がありません。そのうえ、気管壁を過度に圧迫してしまうため避けたほうがいいでしょう。
④パイロットバルブを「耳朶」程度の硬さで調節はしない
よく、カフ圧はパイロットバルブを耳朶の硬さに調節すると良いといいませんか?
ですが、それは大きな間違いです。
確かに、正しくカフ圧を調節したパイロットバルブは耳朶と同じような硬さかもしれません。
しかし、人の手の感覚はそれぞれで、ばらつきがあります。
そのため、適正なカフ圧を調節することはできません。(実際に測定すると、半数以上が30cmH2O以上の高値を示したとの報告があります。)
カフ圧は、高値でも、低値でも合併症があります。
正しく調節するためにも必ずカフ圧計を使用して調節しましょう。
カフ圧によるトラブルと対処法
カフ圧調整時のトラブルと対処法の例について上げていきます。
①カフ圧を適正以上に上げないとカフリークが収まらない
気管チューブが細いことが考えられます。
体格にあわせた気管チューブで再挿管する必要があります。
②カフ圧を適正以上に上げてもカフリークが消失しない
気管チューブの位置が適正ではないことが考えられます。
気管チューブの位置を調節することが必要です。
適正な位置に調節しても、カフリークが消失しない、カフ圧を適正以上に上げないとカフリークが収まらない場合には、体格にあわせた気管チューブで再挿管する必要があります。
③空気を注入してもカフ圧が上昇しない
カフなどの破損が考えられます。
再挿管が必要です。
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