目次
目的と適応
目的
- 筋肉注射は、組織への刺激性があり皮下注射に適さない薬剤を筋肉内に注入する方法。
- 筋層内に薬剤を注入し、毛細血管を経て血液中に吸収させ、目的とする部位や全身に作用させる。
- 静脈注射より緩やかに、皮下注射よりも速やかな薬理効果を得る(吸収速度は静脈注射の1/5、皮下注射の2倍)。
適応
- 経口や直腸内、静脈内与薬など、他の経路での投与が適さない薬物および不適切な場合
- 薬物による局所の刺激が強い、または薬液の量が多く皮下注射ができない場合
- 皮下や静脈に与薬できない、油性薬剤や懸濁液の場合
- 皮下注射よりも多い量の薬剤を投与したい場合(筋肉注射で吸収可能な薬液量は5ml程度)
必要物品
- 薬剤
- シリンジ(5ml以下)
- 注射針 21G~23G
- 消毒用アルコール綿
- 針捨て容器
- 使い捨て手袋
- 注射指示書
- トレイ
※注射針の準備では、油性薬液の場合には注射内圧が高まるため22Gが望ましい。
手順
1.必要物品を準備する。
指示書で、日付、氏名を確認し、薬品名、量、有効期限、薬剤の中身の混濁や沈殿物等の異常が無いこと、投与方法、時間の指示と薬剤、注射ラベルを照合する。誤薬防止のため、調剤済みのシリンジに注射ラベルを貼り、調剤後の空アンプルやバイアルはシリンジと合わせて注射実施終了後まで保存する。
2.手指消毒し、使い捨て手袋を装着する。
可能であれば、患者に名前を名乗ってもらう。
4.注射部位を選択し、注射しやすい体位に整える。
5.穿刺部位を消毒用アルコール綿で中心から外側へ円を描くように消毒し、十分に乾燥させる。
アルコールは乾燥したときに消毒効果を発揮する。
6.穿刺部位の周りの皮膚を一方の手でつまむ。
皮下組織の流動性を防ぎ、筋肉までの穿刺を容易にすることができる。つまむことで、筋肉の深さを把握することができ、骨への到達を防ぐことができる。
7.皮膚面に対して45~90度の角度ですばやく針の長さの1/2~2/3ほどの深さまで穿刺する。
痛みやしびれがないか確認する。 中殿筋の深さは約3.0~3.5cm、三角筋では2.0~3.0cmであるが、皮下脂肪の量によって差があるため注意が必要である。
8.片方の手でシリンジをしっかり固定し、逆の手で内筒を引き血液の逆流がないことを確認する。
血液の逆流が見られた場合は、すぐに抜針して別の部位へと穿刺する。筋肉注射が血管内に入ると、薬効が速くなってしまう。
9.穿刺部位を観察しながら薬液をゆっくり注入する。(5秒/ml程度)
ゆっくりと注入することで、疼痛を減少させる。勢い良く注入すると疼痛が強くなる。筋繊維は間隙が少ないため、疼痛は薬液量に比例して持続し、薬液のpHや油性・水性、浸透圧などによって疼痛の強さは異なる。
10.針を抜き、消毒用アルコール綿を当てて、1~2分間程度マッサージする
薬液の吸収促進のためマッサージを行う。薬液によってはマッサージをしてはいけないものもあるので注意が必要である。
11.注射針または針付きシリンジを針捨て容器に捨てる。
12.手袋を外し、手指消毒する。
13.終了したことを告げ、体位を戻し衣服を整える。
14.使用した物品を適切な方法で片付ける。
15.記録を行う。
注射部位の選択
注射部位 ①よく発達した大きな筋肉 ②神経を避けやすい部位 ③血管を避けやすい部位 が選択される。
通常は三角筋、中殿筋などで行われる。
中殿筋の場合:中殿筋の注射選定方法には3つの方法がある。
クラークの点 | 上前腸骨棘と上後腸骨棘を結ぶ線上で、3分割した上前腸骨棘側1/3の部位 |
ホッホシュテッターの部位 | 大転子に手掌中央をあて、示指を上前腸骨棘にあて、中指と中指をいっぱいに開いた中指第2関節横の部位 |
四分三分法 | 片方殿部を四半分にし、その1/4上外側の対角線上の外側1/3の部位 |
三角筋の場合:肩峰(上肢を挙上するとくぼむ部分)から3横指下の部分
禁忌
乳房切除術でリンパ節郭清側の患肢
麻痺側
シャント造設側の上肢
熱傷・瘢痕・炎症など皮膚の異常がある部位
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