入院前は認知症がなく、しっかりした高齢患者などで、体調不良を契機として入院しせん妄状態となる患者は多々います。
せん妄なのか、認知機能低下なのか判断に困る場面もありませんか?
私自身、病棟で勤務しているとそのような場面に出くわすこともあります。
そして、せん妄状態が改善しそれまでが嘘かのように落ち着き、元の人に戻った時に、これはせん妄だったんだなと実感したりします。
今回は、そんな『せん妄』について勉強していきたいと思います。
目次
せん妄とは
せん妄とは、脳の機能不全状態をいいます。
入院するということは、身体に何らかの疾患を抱えてきているわけです。
高齢者であれば、複数の疾患が影響しあって、悪さをしているのかもしれません。
せん妄状態の時には、そんな身体に由来する様々な原因により脳が機能不全に陥っているのです。
特徴としては、入院後や手術などの侵襲の高い処置を行った後に症状が出て、その症状は急激に現れ、夕方から夜間にかけてより強い症状となることが多いです。
せん妄の症状
せん妄の症状には以下のようなものがあります。
・意識障害
・注意障害
・易怒性
・睡眠障害
・認知機能障害
・知覚障害
・思考障害
・精神運動障害
せん妄のリスク因子とは
せん妄には準備因子、誘発因子、直接因子の3つの因子により生じるとされており、これらの原因がないかを確認し、可能な限りそのリスク因子を取り除くことが求められます。
準備因子
脳の機能低下を引き起こす器質的な因子
・高齢(特に70歳以上ではリスクが高い)
・脳の器質的障害(脳梗塞・脳出血・脳腫瘍・外傷など)
誘発因子
せん妄状態を悪化させる因子
・聴力障害
・視力障害
・睡眠障害
・身体拘束
直接因子
せん妄症状を引き起こす直接の因子
・感染症
・脱水や電解質異常
・薬剤(オピオイド、ベンゾジアゼピン系、ステロイド、抗ヒスタミン薬、H1ブロッカー、抗コリン薬など)
せん妄への治療薬
◯リスペリドン
・注意障害、幻覚、妄想に対する効果が強い
・鎮静作用は弱め
・液剤があり、内服の状態に合わせて選択ができる
・腎臓排泄であり、腎機能障害患者には慎重投与が必要
・催眠目的での使用は難しい
◯クエアチピン
・鎮静、催眠作用が強い
・半減期が短く、効果を翌日に持ち越すことを避けやすい
・昼夜逆転して睡眠覚醒リズムを整えたい場合や不安焦燥感が強いせん妄患者に対して有効
・せん妄ハイリスク患者の睡眠導入剤として用いられる
◯オランザピン
・鎮静、催眠作用が強い
・興奮の強いせん妄に対して有効
・半減期が長いため、翌日へ効果を持ちこむことがあり過鎮静に注意が必要
・抗コリン作用が比較的強い
◯アリピプラゾール
・鎮静作用はほとんどない
・興奮はなく、注意障害が中心のせん妄に対して使用する
・鎮静を避けたい低活動がたせん妄に対して用いやすい
・アカシジアを生じやすい
看護
せん妄の患者さんに対して薬物を使用する場合は、興奮が強くなる前の時間帯から抗精神病薬などの投薬を行うと有効です。
興奮状態になってしまっていると、薬剤が効かないことや、内服や注射を拒否してせん妄が悪化する可能性もあります。
せん妄が続いている間には、興奮が強まる前に不穏時や不眠時の頓服薬を積極的に使用しましょう。
せん妄ケアの原則
せん妄ケアの原則は、早期発見・早期介入・せん妄予防といわれており、予防するための介入が重要になります。
日時・場所の説明を繰り返し行う、カレンダーや時計を目に入りやすい場所に置く、日中は覚醒を促し夜間に良眠が得られるような工夫をする、眼鏡や補聴器を用いる、飲水をすすめるなどの対応が有効といえます。
また、安静に対しては動くように促す(早期離床、歩行器の使用)ことや昼夜逆転を予防し気分転換できるような介入も積極的に行います。
せん妄患者さんとのコミュニケーション
せん妄患者さんとコミュニケーションをとる際には、静かな落ち着いたトーンで話しかける、最初から言動を否定せずにまず理由を聞く、見当識障害の有無などを確認するなどを意識することで、興奮させず、なおかつ自尊心を傷つけることなく対応することができます。
せん妄のアセスメントスケール
リスク因子の有無に関わらず、少しでも違和感を感じたら専用のアセスメントツールを使用して評価します。
主なものに、CAM-ICU、ICDSC、日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケール、せん妄評価尺度98年改訂版などがあり、患者さんの状況に合わせて使い分けます。
コメントを残す