目次
目的と適応
目的
- 少量の薬液(0.2~2ml程度まで)を緩徐に吸収させ、薬理効果を得る。
- インスリン注射や予防接種
適応
- 薬物の効果を正確に作用させたい場合(インスリンなど)
- 内服や直腸からの与薬が適さない薬物及び不適応な場合
- 皮下組織からの緩やかな薬剤効果を期待する場合
- 薬物が消化液によって変化する場合
- 嘔吐などによって経口的与薬が困難な場合
必要物品
- 注射薬剤
- シリンジ(薬液の量に応じてサイズを選択する)
- 注射針 23~25G
- 消毒用アルコール綿
- 針捨て容器
- 使い捨て手袋
- 注射指示書
- トレイ
※インスリン注射の場合には専用の針付きシリンジを使用する。
手順
1.必要物品を準備する。
有効期限、薬剤の中身の混濁や沈殿物等の異常が無いことを確認する。誤薬のリスクを下げるために、調整済みのシリンジに注射ラベルを貼り、調整後の空アンプルやバイアルはシリンジと合わせて注射実施終了後まで保存する。
2.患者確認を行う。
医師の指示書で、日付、氏名を確認し、薬品名、量、投与方法、時間、注射ラベルを照合する。可能であれば患者自身に名乗ってもらう。
3.目的を説明し、皮下注射することを伝え、同意を得る。
4.手指消毒し、使い捨て手袋を装着する。
6.注射部位を消毒用アルコール
7.綿で中心から外側へ円を描くように消毒し、十分に乾燥させる。
アルコールは乾いた時に消毒効果を発揮する。
8.注射部位の皮膚を母指と示指でしっかりつまみ上げる。
皮下組織の流動性を防ぎ、刺入を容易にすることができる。
9.皮膚面に対して10~15度の角度ですばやく針の長さの2/3ほどの深さまで穿刺する。
穿刺時には、神経・血管損傷の有無を観察する。皮下脂肪が薄い場合は、筋肉や神経、血管に刺入する危険があるため、浅い角度で刺入する。皮下脂肪が厚い場合には、90度で穿刺する。
10.片方の手で穿刺部位をしっかり固定し、逆の手で内筒を引き血液の逆流がないことを確認する。
血液の逆流が見られた場合は、すぐに抜針し、針を交換し別の部位に実施する。血管内に入っている場合には薬効が速くなり危険である。
11.注射部位を観察しながら薬液をゆっくり注入する。
ゆっくり注入することで疼痛が緩和される。勢い良く注入すると疼痛が強くなる。
12.薬液注入後すばやく針を抜き、消毒用アルコール綿で注射部位を軽く押さえる。
注入後にマッサージするかどうかは薬剤により異なる。例として、インスリンは注入後のマッサージにより吸収速度が速まり、低血糖を起こす原因となるため行わない。ゆっくりと薬剤を吸収させるためマッサージしないことが多い。
13.注射針または針付きシリンジを針捨て容器に捨てる。
14.手袋を外し、手指消毒する。
15.終了したことを告げ、体位を戻し衣服を整える。
16.使用した物品を適切な方法で片付ける。
17.記録を行う。
動画
上の手順と若干異なる点もありますがご容赦ください。
注射部位の選択
皮下注射では皮膚と筋肉の間にある皮下組織に注入する。
頻回に皮下注射を行う場合は、炎症・壊死・硬結の原因となり、薬液吸収が低下するため注射部位を毎回変更する必要がある。
注射部位としては、血管や神経の分布が少なく、皮下組織の厚い部分が選択される。(以下に記載)
腹壁 | 大腿上部外側 | 背部 |
上腕外側 | 腰部外側 |
※上腕外側を選択した場合は、肩峰と肘頭を結んだ線上の下から1/3の部位に穿刺します。
禁忌
- 出血傾向がある場合
- 大量の薬剤が必要な場合(皮下注射で吸収可能な量は2ml程度)
- 皮下脂肪がほとんどない、るい痩患者などの場合(皮下注射では5mm以上の皮下脂肪が必要)
- 皮下組織であっても、浮腫が存在するような場所
コメントを残す