目次
摘便とは
摘便とは、直腸に貯留し自然排泄ができない際に溜まっている便を用手的に排出される方法である。
目的と適応
目的
- 直腸内の便が硬く自力排便が困難で、内服や浣腸で排便できない場合に指を用いて便の排出を行うことで排泄の促進を図る。
適用
- 硬便であるために浣腸や内服の処置を実施しても排便が困難な場合
- 長期臥床、高齢者、など十分にいきむこと(腹圧をかけること)ができず自力排便が困難な場合
- 脊椎損傷などにより下部直腸神経麻痺がある場合
必要物品
- 使い捨て手袋
- ビニールエプロン
- 潤滑剤(ワセリンなど)
- 防水シーツ
- 差し込み便器または紙おむつ
- トイレットペーパー
- 掛け物(バスタオルまたはタオルケット)
- ディスポーザブルガーゼ
- ビニール袋
手順
1.患者の排便状況、バイタルサイン、腸蠕動音、腹部膨満の状態を確認する。
どの程度便が貯留しているか目安をつけ、摘便が最も適切な援助であるかをアセスメントし、処置が可能な状態か確認する。また、肛門の異常や易出血傾向にある場合、処置ができないことがある。
2.医師から摘便の指示が出されているか確認する。
3.目的を説明し同意を得る。
4.手指衛生を行い、使い捨て手袋、ビニールエプロンを装着する。利き手には、破損時の感染・汚染予防のため手袋を二重に装着する。
汚染がひどくなったり、摘便終了後に外し、速やかに次の処置に移ることができる。5.患者の準備を行う。
ベッドの高さを調節して看護師が処置しやすい高さにし、必要に応じて看護師側の柵などを外す。
患者本人であるかの確認をする。 カーテンを閉め、バスタオルをかけ羞恥心に配慮しプライバシーを保護する。 臭いを伴うため必要に応じて換気にも配慮する。
6.患者の腰の下に防水シーツを敷き、差し込み便器を患者の近くに置く、もしくは紙おむつを肛門部の下に敷く。
便塊の間から便汁が垂れ込んでくることもあるため、防水シーツやおむつを十分敷いておくとよい。
7.患者の下着を下げ、左側臥位となってもらう。
左側臥位となる理由 ・解剖学的に摘便により排便が促されると続いて排便が出やすい ・実施者の多くは右利きであるため作業がしやすい
8.潤滑剤を利き手の示指に多めに塗布する
肛門や直腸壁の損傷を予防する。潤滑剤が足りないと、すべりが悪く患者の疼痛も強くなる。
9.患者に口でゆっくり深呼吸をさせ、肛門周囲を輪状にマッサージする。
口で息することにくわえ、肛門周囲のマッサージにより肛門括約筋を緩める効果が期待できる。
10.患者の呼気に合わせてゆっくりと示指を直腸壁に沿って挿入するし、直腸内の便の硬さや位置を確認する。
ゆっくりと挿入することにより肛門括約筋が弛緩しやすくなる 。
11.摘便が終了したら、肛門についた便をふき取り、利き手の汚染された使い捨て手袋を外す。必要時、陰部洗浄を行う。
12.使い捨て手袋、ビニールエプロンを外して、手指衛生を行う。患者の衣類を整え、掛け物を掛ける。必要ならばトイレに誘導する。
13.患者の状態を観察する。
急激な便の排出によりショック症状を起こす危険性がある。 処置により疲労を伴い、迷走神経の刺激で徐脈や不整脈を引き起こすことがある。 肛門の異常や易出血傾向の有無を確認する。 排便の状態についても観察する。
14.患者の環境を整える。
15.適切な方法で後片付けを行う。
排泄物取り扱い時は、標準予防策として使い捨て手袋を着用し、排泄物への接触や飛散による衣服の汚染が予想される場合(洗浄時など)はビニールエプロンを着用する。
16.手指消毒し、記録を記載する。
動画
上の手順と若干の違いもありますがご容赦ください。
禁忌
- 迷走神経を刺激する可能性があるため、不整脈または心疾患の既往歴をもつ患者はより大きなリスクがある。必ず処置の前後に患者の脈拍を観察する。
- 心臓疾患患者では禁忌となる場合がある。
- 易出血状態にある患者(直腸内や肛門周囲にポリープがある、血小板数の減少など)
- 肛門周囲に炎症や創傷などがあり、悪化の可能性がある場合
- 骨髄抑制など易感染状態である場合
- 肛門、直腸、泌尿器、生殖器の手術後
- 妊娠中
摘便のポイント
- 腸粘膜の刺激や損傷のリスクがあるため、指を挿入する際は十分に潤滑剤をつけ直腸壁に沿ってゆっくり挿入する。
- 痔核のある患者は、痔核を避けてできるだけ患者の苦痛が少ない方向に指を挿入するよう注意する。
- 看護師の指が冷たいと肛門括約筋が収縮して挿入が困難となるため、手を温めておく。また、腸粘膜に刺激や損傷を与えやすいため、看護師の爪は短くしておく。
- 便塊が大きいときは肛門部への刺激が大きく肛門部裂傷や直腸潰瘍が生じる可能性があるため、少しずつ砕きながらかき出していく。
摘便の進め方
1.直腸内へ指を挿入したら、指を回して直腸壁から便を遊離する。
2.便塊を少しずつ削り取るように摘出していく
3.患者の腹圧などの刺激を加えて、更に便塊を出していく。
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