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【病態】
発作性に起こる気道狭窄によって、喘鳴や呼気延長、呼吸困難を繰り返す疾患です。
これらの臨床症状は自然ないし治療により軽快・消失するが、ごくまれには致死的となります。
こうした発作性の急性症状を喘息発作とよびます。
気道が常に炎症していることが原因で、以下のことが起こっています。
①気道の過敏性が増す
気道が過敏になり、ちょっとした空気の変化で咳が出ます。
②化学伝達物質(ケミカルメディエーター)の放出
気道が炎症を起こしていることが原因で、炎症細胞が活発になり、様々な化学伝達物質を放出する。喘息での代表的な化学伝達物質は、ヒスタミンやロイコトリエン。
この化学伝達物質は、気管支の収縮や気道のむくみを引き起こすため、気道が狭くなります。
③気道のリモデリング
喘息では、気道が慢性的に炎症を起こしているため、体はこれを治そうとして絶えず気道の作り直し(リモデリング)を行います。
この作り直しの期間が長くなると、だんだんと気道の壁は厚くなり、その結果気道が細くなり、空気の通る量が少なくなります。(気流制限)
→このリモデリングによる気流制限が一度出来上がってしまうと改善しません。
【症状】
①喘鳴とは耳で聴取できる気道由来の雑音。喘息発作では呼気性喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)が吸気性喘鳴よりも優位に聴取されます。
②聴診所見では両肺野に呼気性の連続性ラ音を聴取できます。
③呼気延長を主徴とする呼気性の呼吸障害(多呼吸、起坐呼吸、陥没呼吸、チアノーゼなど)がみられます。
→起坐呼吸がみられたら重症。
④夜間や早朝に発作が起こりやすいです。
→夜間は副交感神経が優位になり気道が狭くなりやすいため。早朝は気温が低下し空気が冷たくなることで気道が刺激されるため。
⑤検査所見では、末梢血の好酸球の増加、血清IgE値の上昇をみとめることが多いです。
【治療】
治療の基本は、長期管理薬と発作治療薬を使用した薬物療法です。
長期管理薬とは、発作が起こらないように、毎日続ける薬で、発作治療薬とは発作が起こった時に発作を鎮めるための薬です。
- 発作治療薬
・β2刺激薬(短時間作用型)
素早く気管支を広げる効果があります。
頻回に使用すると気道の状態が悪化することがあります。また、動悸など心臓への負担もあるため、あくまで緊急時の対処薬として使用します。
- 長期管理薬
・ステロイド薬
炎症を抑える強い効果がある。薬の形状は、吸入薬、飲み薬、点滴と様々。特に吸入するタイプのステロイド薬は軽症から重症まで、使用される状態の幅が広く、喘息治療の基本薬です。
飲み薬のステロイド薬と比較しても、吸入薬は副作用が少ないため、毎日継続的に使用することができます。
・β2刺激薬(長時間作用型)
アレルギーによる気道の炎症を抑えたり、気道の収縮を抑える効果があります。
薬の形状は、吸入薬、貼り薬、飲み薬と様々。吸入薬にはあらかじめステロイド薬の成分を含んでいるもの(配合剤)もあります。
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
炎症を抑えて、気流制限を改善する効果があります。薬の形状は飲み薬のみです。
・テオフィリン薬
気管支を広げる効果があります。薬の形状は飲み薬と坐薬です。
最近では、重症喘息に対する注射薬(オマリズマブ、メボリズマブ)や、複数の薬を使っても改善がみられない場合には、気管支内視鏡を使って気管支内部を温めて喘息症状を安定させる新たな治療法(気管支サーモプラスティ)も登場しています。
【看護】
①発作時は起坐位とし、気道の虚脱を防ぐため、腹式呼吸や口すぼめ呼吸を行うように指導します。
②脱水予防、痰の粘稠性を低下させ喀出を促すため、水分を十分補給します。
③悪化のサインを見逃さない。(呼吸状態やSpO2の低下)
→呼吸音減弱、意識障害(興奮、意識低下、疼痛に対する反応の減弱など)は危険な徴候です。
④医師指示の内服薬や吸入薬を確実に行います。
⑤患児・親への指導:アレルゲンの除去、予防薬の内服、発作時の水分補給・吸入薬の適切な使用
→喘息の症状や発作がなくても気道が炎症を起こしていることはよくあり、この状態が継続すると、その後の喘息発作や喘息死の危険性が増えてしまいます。そのため、症状や発作がないからといって自己判断で治療や内服を中断しないよう説明します。
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