目次
脈拍測定について
心臓は、収縮と拡張を繰り返すことにより全身の組織に血液を送っています。
その血液が身体に行き渡っているのかを把握するために脈拍や血圧を測定します。
脈拍測定では、一般的に橈骨動脈で行います。
1分間に何回の脈拍が打っているのか、脈の強さやリズムを観察します。
正常は60~90回/分程度で、リズムも一定です。
測定を行う部位としては、橈骨動脈の他、浅側頭動脈・上腕動脈・腋窩動脈・大腿動脈・膝窩動脈・後脛骨動脈・足背動脈があります。
脈拍は、血液が組織へと行き届いているサインです。そのため、血圧が低くなると脈拍は触知することはできなくなります。脈拍が触知出ればその部位よりも中枢側では血液が行き届いていることになります。
例として、橈骨動脈で脈拍が触知できているのならば、それより中枢側の上腕動脈が触知できないことはないのです。
一般的には60mmHgを下回ると橈骨動脈での触知ができません。
脈拍が触知できないときには、その部位より中枢側で触知できるか探してみましょう。
頻脈のアセスメント
血圧・心拍出量維持のための頻脈
まずは、血圧や心拍出量についての大前提について知っておきましょう。
血圧は「心拍出量」と「末梢血管抵抗」で決められています。
血圧=1回心拍出量×末梢血管抵抗
この中で1回心拍出量は「前負荷」「後負荷」「脈拍」「心筋収縮力」が影響しています。
さらに、1分間の心拍出量は、「1回心拍出量」と「脈拍数」で決められます。
1分間の心拍出量=1回心拍出量×脈拍数
このことを念頭においてアセスメントしていきましょう。
①循環血液量減少による頻脈
循環血液量が減少し頻脈になる状態を循環血液量減少性ショックといいます。
出血や脱水など直接的に循環血液量が減少した状態にある場合、人間の身体では1分間の心拍出量や血圧を維持しようとする働きをしています。
どのようにして心拍出量や血圧を維持しようとするのでしょうか?
循環血液量が減少することにより前負荷や,心拍出量が減少し血圧が低下します。しかし、身体では1分間の心拍出量や血圧を維持するために、血圧の低下に先行して頻脈になるのです。
1回心拍出量が少ないため、血圧や1分間の心拍出量が低下しないよう、心拍数を増やし代償しようとするのです。
出血や脱水の場合に、血圧が保たれており普段よりも頻脈である場合にはショックを起こしているこが考えられます。
また、血圧を維持するために末梢血管抵抗を上げるということも身体では起こります。
末梢血管抵抗を上げる。つまり、血管を収縮させ、血管内容量(血液が必要な量)を減らし、血圧を上げることができます。
末梢血管を収縮させるため、指先など四肢末梢の冷感が出現します。
ちなみに、循環血液量15~30%の出血で、頻脈のほか、頻呼吸,CRTの遅延,末梢冷感,冷汗がみられるとされています。さらに,意識レベルや血圧の低下は状態の悪化を示しているため,止血や大量輸液などの対応が必要となります。
②心筋収縮力低下による頻脈
心筋収縮力が低下してしてしまった場合には、1回心拍出量が減少してしまうため、血圧や1分間の心拍出量が低下しないよう、心拍数を増やそうとします。
心筋収縮力が低下してしまう頻脈の原因としては2つ考えられます。
1つ目として、心不全による心原性ショックの状態がいえます。
心臓自体の機能が低下することにより、血液を全身に送るポンプとしての作用が障害され、頻脈の他、肺や下肢をはじめとした全身のうっ血、肺うっ血による呼吸困難などが生じます。
このような、心臓自体のポンプ機能の障害によるショック状態を心原性ショックといいます。
2つ目として、心タンポナーデや緊張性気胸、肺血栓塞栓症などによる心外閉塞・拘束性ショックの状態がいえます。
これは、心臓自体には問題はないのですが、何らかの原因により心臓に直接強い圧力がかかった状態になることにより、収縮・拡張が妨げられ、結果として血液を送り出すことができなくなり心拍出量が低下してしまいます。
このように、心臓のポンプ機能には異常はなく,心血管系回路の閉塞や周辺からの圧迫により心拍出量が低下して生じるショック状態を心外閉塞・拘束性ショックといいます。
- 心タンポナーデでは、心嚢内に液体(または気体)が貯留することにより、心臓が圧迫されてしまう。
- 緊張性気胸では、肺胞が破れたことにより胸腔内に気体が貯留し、胸腔内圧が上昇することにより心臓が圧迫されてしまう。
- 肺血栓塞栓症では、血栓により肺動脈が閉塞してしまうため、酸素を取り込めなくなったり心臓から血液を押し出せなくなり、心臓のポンプ機能を妨げます。
③血液分布異常による頻脈
これは、感染症(敗血症)によるものが多いと思います。
感染症に罹患すると、サイトカインなどの働きにより血管の拡張が起こります。
血管の拡張が起こるということは、血管内容量(血液が必要な量)が増えることになります。そうなると、血圧は低下します。
このような場合にも、血圧や1分間の心拍出量を維持するために頻脈になります。
ついで、アナフィラキシーショックが考えられます。
アナフィラキシーでも感染症と同様に、血管の拡張が起こり血管内容量(血液が必要な量)が増えます。
しかし、アナフィラキシーではじんましんや皮膚紅潮、顔面浮腫、呼吸困難などの症状も同時に現れます。
このような、末梢血管が拡張して起こるようなショックを血液分布異常性ショックといいます。
ちなみに、ショック状態というものは基本的には四肢の末梢が冷たくなります。しかし、血液分布異常性ショックの初期では血管拡張の起こるため、末梢は温かいままで「温かいショック(ウォームショック)」とも呼ばれます。
不整脈による頻脈
不整脈により頻脈になることもあり、このことにより起こるショック状態は心原性ショックの1つとされています。
頻脈性の不整脈としては、洞性頻脈、心房細動(AF)、心房粗動(AFL)、心室頻拍(VT)などがあります。
頻脈になることにより、有効な血液の拍出が行われず、心臓は空打ちのような状態となる場合があります。この場合には、血圧が下がることになります。
また、頻脈性不整脈が契機となって心不全の状態となることもあります。
交感神経亢進による頻脈
心臓の拍動するリズムは自律神経系(交感神経と副交感神経)によって中枢から制御されています。
疼痛や運動、ストレスなどは、交感神経を亢進します。
交感神経が亢進することにより頻脈にもなります。
まとめ
一概に頻脈といっても考えられる原因はたくさんあります。
脈拍数以外のデータとも合わせてアセスメントしていく必要がありますね。
診断などは医師が行いますが、異常を一番早く発見できるのは看護師です。
どのような原因があるかアセスメントし、医師に報告が必要なのかを判断するためにも知っておく必要がありますね。
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