普段の看護業務の中で陰部洗浄を行うことは多々あると思います。
排便が頻回にあるからといって、毎回洗浄していませんか?
皮膚をきれいにしようと思い行っているその行為が、実は患者さんにとって害になっているかもしれませんよ。
薬剤塗布しているのにも関わらず、なかなか皮膚トラブルの治癒が遅いなと思ったら陰部洗浄を頻回に行っていませんか?
今回は、陰部洗浄について改めて考え直すきっかけになっていただければと思います。
目次
失禁に伴う皮膚トラブルとは
尿・便失禁にともなう皮膚トラブルをIAD(失禁関連皮膚炎:incontinence associated dermatitis)といいます。
病院や施設内でもおむつを着用し尿・便失禁している患者で皮膚炎となってしまうことがあると思います。
いわゆる「おむつかぶれ」というものですね。
IADは
①尿や下痢便、汗などによる水分暴露
②便による消化酵素(脂質分解酵素やタンパク質分解酵素)
の影響により皮膚浸軟が起こり、皮膚のバリア機能が破綻してしまうことにより、発赤や水泡、びらんなどのIADが発生します。
IADが発生した時にはすでに、細菌などが皮膚の組織内部に侵入しており、予防的ケアが重要といえます。
頻回の陰部洗浄により起こること
皮膚は本来、細菌などが皮膚の組織内部に入り込まないようにするバリア機能があります。
バリア機能は皮膚の表面にある弱酸性の皮脂膜によるのもです。
その皮脂膜が外部からの刺激から皮膚を守ってくれるのです。
しかし、尿や便などの排泄物や汗によりおむつ内が蒸れ、皮膚が浸軟した状態ではバリア機能が低下してしまいます。
バリア機能が低下している皮膚に、頻回の石鹸による洗浄が行われることで以下のようなことが起こります。
①石鹸を用いての洗浄は、皮脂成分も洗い流してしまいます。そのため、皮脂成分の減少につながりドライスキンとなります。
②洗浄する際の摩擦により、皮膚に刺激が加わります。
これらのことにより、頻回の陰部洗浄はIADを改善するどころか悪化させてしまう要因になってしまうのです。
IADへの対応
IADの患者に対しては、石鹸による洗浄は1日1回に留めることが必要です。
また、洗浄後のドライスキンを予防するために保湿剤や撥水剤の塗布を行うことが勧められます。あまりにも悪化したIADには亜鉛華軟膏による保護も有効ですよ。
※亜鉛華軟膏は薄くではなく、たっぷりと塗ってあげてくださいね。
下痢便や軟便が頻回にある場合には、軟便専用のパットもあるので使用してみてはどうでしょうか。
場合によっては、直腸用カテーテル使用による皮膚の汚染予防が必要になるかもしれませんね。
まとめ
患者のためと思い行っていた陰部洗浄が、実は患者にとっては害になっている場合があることを知っていただけたかと思います。
そして、IADを起こしてしまうと処置が必要になるため、我々看護師の業務も増えてしまいます。
患者・看護師双方のためにもIADの予防に努めていきましょう!!
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