なぜそうするの?血圧測定を正しい方法で行うための注意点

 

看護師として働いていると血圧は高頻度で測ることがあると思います。

ふと、「血圧測定はこれでいいのかな?」

なんて疑問思うことはありませんか?そんな時はどうしてますか?

  • 血圧の左右差がある場合
  • 乳癌手術後やシャント造設している場合
  • 体位をどうするのか?
  • 脳梗塞による麻痺などがある場合

などなど・・・・。そんな場面は数多くあると思います。

今回は、何点かピックアップしています。疑問が解消できるよう共に学んでいきましょう!!

 

目次

血圧の正常値と血圧に影響してしまう因子

まずは血圧の正常値から覚えていきたいと思います。正常を知らなければ、異常は判断できないのです。

血圧の分類については次の通りとなります。

分類 収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
至適血圧 <120 <80
正常血圧 <130 <85
正常高値血圧 130~139 85~89
Ⅰ度高血圧 140~159 90~99
Ⅱ度高血圧 160~179 100~109
Ⅲ度高血圧 ≧180 ≧110
収縮期高血圧 ≧140 <90

正常値も大切ですが、さまざまな因子によって血圧は変動します。そのことも知っておくと何かの時に役に立つかもしれませんよ。

 

基本的に血圧を決める要因としては、心拍出量血管壁の弾力性末梢血管の抵抗循環血液量血液の粘度などがあります。しかし、それらは環境因子による影響で自律神経が刺激されることにより容易に変動が起こります。

血圧調整の代表的な環境因子としては次のものがあります。

 日内変動  血圧は常に一定ではなく変動しています。一般的に起床時が最も低く、昼食摂取の前後(12時ごろ)が最も高いです。
 気温  気温が低くなると血管が収縮し血圧は上昇し、気温が高くなると血管が拡張し血圧は低下します。
 食事  食後は、代謝が亢進することにより心拍出量が増加するため血圧が上昇し、1時間程度で元に戻ります。
 入浴  湯温が高い場合には血管が収縮し血圧が上昇し、適温の場合には血管の拡張が起こり血圧が低下します。
 体位  収縮期血圧は臥位>座位>立位、拡張期血圧は立位>座位>臥位の順に高くなります。
 アルコール  アルコールは適量であれば、循環血液量が増加するため血圧は低下します。
 喫煙  喫煙は血圧を上昇させます。
 運動  交感神経系の刺激により代謝が亢進するため、心拍出量・循環血液量が増加するため血圧は上昇します。
 排泄  排泄時はいきみなどにより血圧が上昇しますが、排泄後は血圧は低下します。
測定手技  マンシェットが大きかったり緩く巻くと血圧は上昇、マンシェットが小さかったりきつく蒔くと血圧が低下します。
精神状態  緊張や不安、ストレスなどによる精神的興奮のある場合には血圧が上昇します。

血圧測定時に、普段よりも大きく変動があった場合には環境要因が無かったのかをアセスメントすることも必要ですね。

 

血圧測定の時の腕の高さはどうするの?

血圧測定を行う際の腕の高さは心臓と同じ高さにします。

血圧測定時に腕を上げてしまうと、上げた分の血液の重さが加わってしまうため、その分の重力が加わるため血圧が低い値が出てしまいます。逆に、腕を下げてしまう場合でも、下げた分の血液の重さが加わってしまうため、その分より強い血圧で血液を押すが必要になるため高い値となってしまいます。

 

血圧に左右差がある場合

血圧の左右差は通常10mmHg以内です。

血圧の左右差が10mmHg以上ある場合は異常を疑い(グレーゾーン)、20mmHg以上ある場合には異常があることが考えられます。

 

血圧に左右差がある原因としては、上腕動脈の狭窄、動脈硬化や大動脈炎による鎖骨下動脈閉塞など、動脈の狭窄や閉塞が生じていることにより起こります。

そのため血圧の左右差がある場合には、血圧の高いほうを基準に考える必要があります。それは、高いほうが本当の血圧であるためです。

左右差があって、低いほうの血圧は、狭窄・閉塞している末梢の血圧が低いだけであって、全身的な血圧はそれよりも高いのです。そのような場合に、低いほうを基準として考えてしまえば高血圧などを見逃してしまうことになりますね。

 

乳癌手術後の場合

乳癌手術後の患側での測定は、できなくはありません。しかし、推奨もできません。

この問題が発生する場面としては、リンパ郭清をしている場合だと思います。リンパ郭清をした患者へは「患側で長時間の圧迫は、リンパ流の減少を引き起こし、循環障害によるリンパ浮腫が起こるため避ける」ことを指導します。

そのため、短時間の圧迫である血圧測定であれば可能であると判断できます。

しかし、圧迫はできる限り避ける必要があるため、どうしても患側での血圧測定が必要な場合を除き、乳癌手術後の患側での血圧測定は避けた方がいいでしょう。また、患側で血圧測定が必要な場合には主治医に確認した方がいいかもしれませんね。

 

内シャントが造設されている場合

内シャントは、透析が必要な場合に前腕の動脈と静脈をつなぎあわせて造設されます。

内シャントは、その造設部位の血流が減少したり、途絶えてしまうことにより閉塞してしまいます。内シャント造設患者には「シャント側の腕を圧迫しない、重いものを持たない、腕枕をしない」などの指導を受けています。

 

血圧測定による圧迫は一時的ですぐに血流が戻りますが、シャントへの負担が大きく、シャントが閉塞する原因となるため、必ずシャント側と反対側で行う必要があります。

 

麻痺側がある場合

麻痺側は、末梢循環が悪く静脈血や組織液がうっ滞しやすく循環血液量が低下するため、健側よりも低くなるといわれています。

しかし、ある研究結果によれば麻痺側と健側での血圧測定による左右差が見られないというものもあるため、一概に麻痺側での血圧測定がいけないというわけではなさそうです。

 

上肢で測定できない場合

血圧の測定部位の基本は上腕で測ります。一般的に血圧といえば上腕動脈の血圧を意味し、病院においてもほとんどは上腕で測定することが多いと思います。これは上腕が心臓に近く、より正確な測定値が得ることができるためです。

しかし、上腕に怪我をしている場合や輸液などのラインがあり測定できない場合はには、どこで測定しようか悩みますよね。

そんな時には下腿での測定が第一選択となります。下肢で測定する場合は、上腕よりも20~40mmHg数値が高く測定されるのでアセスメントする際には気をつけてください。

 

 

電子血圧計での注意点

最近は、ほとんどの病院で電子血圧計が導入されていますよね。手動式の血圧計は測定が面倒であるため、ついつい電子血圧計に手を伸ばしがちになってしまいますよね。

カフ圧を上げるだけで自動で測定でき、脈拍数まで表示してくれる電子血圧計は完璧なものに思えるかもしれませんが弱点といえる注意点もあることを覚えておきましょう。

電子血圧計では正確な値を測定できない場合があります。それは、頻脈性の不整脈がある場合ですね。

電子血圧計では、脈派の振幅で血圧を測定します。しかし、心房細動(AF)のような不整脈の患者では一回毎の心拍出量が異なり脈派の振幅が乱れてしまうため、多くの電子血圧計では脈派の振幅の感知が難しいようです。

不整脈の患者で正確に血圧測定を行っていくためには、手動式の血圧計での測定が必要ですね。

 

まとめ

どうでしたか?日頃の疑問は解決できたでしょうか?

医療の現場は日々進歩しているため、今後は革新的な血圧測定の方法が生まれるかもしれませんが、現在ではいろいろな場面で迷うことがありますよね。

そんな時は、正しい方法を調べてから実施し、患者さんの負担にならないように行っていきましょう。

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