虚血性心疾患(IHD)の看護とはー心筋梗塞と狭心症

虚血性心疾患とはどのような状態なのか?
どういうことに注意して看護すればいいのか?など

今回は、虚血性心疾患について学んでいきたいと思います。

 

虚血性心疾患とは

冠動脈が何らかの原因により狭窄(狭心症)や閉塞(心筋梗塞)し、酸素需要に見合った十分な血液量を心筋に送れなくなり、心筋が虚血に陥る病態を虚血性心疾患(IHD: Ischemic Heart Disease)といい、主に心筋梗塞や狭心症を指します。

心臓が必要とする血液灌流を受けることができず、酸素不足になっている状態。酸素不足下でもATPを産生しなくてはならず、結果として心筋が傷害され痛みが生じることになります。

心筋虚血が引き起こされると・・・

  • 胸の中心部
  • みぞおち
  • 背中
  • 左肩

などに「放散痛」が起こります。

これが続くと全身に血液を供給する機能が低下し、ショック状態から多臓器不全(MOF:multiple organ failure)になります。
さらに心筋の電気障害を引き起こしてさまざまな不整脈を引き起こします。

 

冠動脈とは

冠動脈は大動脈起始部の膨大部(Valsalva洞)から分岐し、拡張期に血流が大動脈から冠動脈に流入し、心筋に血液を供給します。

冠動脈には右左の冠動脈があります。
左冠動脈は根元近くでさらに、心臓の前側に下りてくる前下行枝と背中側に回り込む回旋枝に枝分かれします。

右冠動脈(RCA)は洞結節、房室結節、右心室、心臓の後壁および下壁を栄養。
左前下行枝(LAD)は心室中隔、心臓の前壁、心尖部を栄養。
左冠動脈回旋枝(LCX)は心臓の左側壁、左後壁を栄養。

冠動脈はSeg(セグ)分類で番号が付けられています。
右冠動脈はSeg①~④ 左冠動脈主幹部(根元)はSeg⑤ 左前下行枝はSeg⑥~⑩ 回旋枝は⑪~⑮となっているので、覚えておく必要があります。

 

【狭窄度の表現方法】・AHA分類による狭窄度の分類:狭窄度をパーセント表示したもの。

  • 25%(0~25%)
  • 50%(26~50%)(LMTの場合50%以上で有意狭窄)
  • 75%(51~75%)
  • 90%(76~90%)
  • 99%(91~99%:99%では、造影遅延を伴う)
  • 100%

・LMT以外は75%以上の狭窄が治療適応となります。

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病態について

心筋梗塞

心筋梗塞は冠動脈が閉塞し、血流が途絶えてその先の心筋が壊死してしまう状態で、一度壊死してしまった心筋は回復しません。

心筋梗塞の時間的分類

①急性心筋梗塞:発症~72時間
②亜急性心筋梗塞:72時間~1か月
③陳旧性心筋梗塞:発症1か月以降

症状

  • 胸痛
    通常30分以上持続し、強い胸痛。安静にしていても改善しない。左腕・肩に放散痛出現。
  • 悪心・嘔吐
    自律神経症状の1つとして出現する。これは、迷走神経症状であり、下壁梗塞の際、しばしば見られる。(心臓の下壁と消化器の支配神経が隣接しているため出現しやすい)
  • 呼吸困難・湿性ラ音
    急性期に出現した場合は、著明な肺静脈のうっ血を起こしていることを示し、肺水腫がみられる。心不全にも注意。
  • ショック症状
    心拍出量低下に伴い、末梢循環障害が出現。顔面蒼白、チアノーゼ、冷汗(四肢冷感)、脈拍微弱、徐脈、不整脈、尿量減少、血圧低下などの症状を呈する。
  • 発熱
    発作後24時間ほどで37~38℃に上昇する。
  • 心雑音
    心室中隔穿孔や左室乳頭筋不全が疑われる。
  • 精神状況
    突然におこる激しい胸痛や重圧感から死への絶望感、強い不安を伴う。ストレスによる胃潰瘍も出現する。脳の血液循環障害が起こると、無力感、せん妄状態、うつ状態を呈する。

診断

心電図上T波増高、ST上昇、異常Q波、冠性T波。
血清酵素のCK,CK-MB, GOT, LDH上昇。
心臓カテーテル検査(CAG:冠状動脈造影)などにより診断します。

血中酵素の上昇とは
心筋が虚血から壊死に至る過程で、壊死を起こしたことにより心筋細胞内にある酵素が血中に放出されることを心筋逸脱酵素といいます。
酵素の上昇が大きいと梗塞巣が大きいといえます。

①CK/CK-MB
発症後早く出現し、最も短時間でピークに達する。血中から消失する時間も早い。CKは心筋以外の筋障害でも上昇する。CK-MBは心筋障害のみで上昇し特異性が高いため、同時に推移を追っていく。

②AST
心筋梗塞でも上昇するが、心筋や骨格筋、肝臓などに広く存在するため、その他酵素も追っていく。

③LDH
出現が遅く、正常化も1~2週間要する。LDHには5つ分類されていて心筋由来の1-2、肝由来の5の経過をみて心or肝疾患か鑑別していく。

④トロポニンT
トロポニンは、筋収縮機能を調節している物質で、心筋、横文筋縮調節をつかさどる蛋白。心筋壊死を反映して血中レベルが増加。

心筋酵素 異常値発現時間 ピーク 正常化
①CK/CK-MB 発症後4~6時間 12~24時間 4~6日
②AST 発症後3~6時間 12~30時間 3~5日
③LDH 発症後4~8時間 24~72時間 1~2週間
④トロポニンT 発症後3~4時間 12~18時間 約10日以降

合併症

心筋梗塞の範囲が広いほど、以下の合併症の出現頻度が高くなります。

  • 不整脈
    発症直後の急死の原因として重要。24時間以内に多く、致死性不整脈が 起こりやすい状態。
  • 心原性ショック
    急激に心臓のポンプ作用が悪化し血圧が低下する状態で、血液が全身にわたらず循環不全となり酸素供給ができなくなること。(意識レベル・血圧・尿量の低下・末梢循環不全が起こる)
  • 心破裂
    発症後、2週間以内がほとんどで梗塞部に亀裂が生じる。突然死の原因となり、 危険因子は高血圧の持続をはじめ高齢者・ST再上昇・胸痛などである。
  • 心不全
    心筋梗塞に伴う急性心不全に用いる分類として「Killip分類」がある
  • 乳頭筋断裂(合併症:MRで4週間以内)   発症2~5日目に下壁梗塞に合併することが多い。
  • 心膜炎
  • 梗塞後狭心症(再梗塞)
    心筋梗塞後24時間~一か月以内に出現。冠動脈の攣縮の関与や運動刺激により誘発された胸痛発作。
  • 心室瘤
    前壁梗塞に合併することが多く、心筋梗塞後に壊死した心筋が変性することによって起こる。 急性期を過ぎてもST上昇がある。

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狭心症

狭心症は冠動脈内の狭窄により、酸素需要と供給バランスが破綻し、血液量が減少した状態です。

発症の誘因による分類

  • 労作性狭心症(eAP)
    主に労作などの心筋酸素需要の増加による。
  • 安静時狭心症
    安静時でも発作がおきる。
  • 冠攣縮性(異形狭心症,CSA)
    冠動脈の攣縮による冠血流量の減少や途絶により、心筋の酸素需要と供給バランスがくずれることによっておこる。(夜中や朝方に起こりやすい。)

経過による分類

  • 安定狭心症
    発症から一か月以上経過。一定の労作で出現し、心筋酸素需要が多くなると心筋への酸素供給が追い付かず、虚血になること。
  • 不安定狭心症
    血栓やプラークで急激に狭窄が起こり、心筋梗塞へ移行する危険がある状態。

症状

安定(労作)性狭心症では数分~10分以内の胸痛が生じます。
不安定狭心症では30分以内の胸痛が生じます。

胸痛の訴えとしては圧迫感、絞扼感、不快感、灼熱感などがあり、安静により寛解します。

診断

心電図上のST低下、又は上昇。
心臓カテーテル検査(CAG:冠状動脈造影)などにより診断します。

 

虚血性心疾患患者の看護

症状の以外の観察項目

症状以外ではレントゲンや心エコーなどのデータをみています。

  • レントゲンでは・・・うっ血の有無や心臓肥大など
  • 採血では・・・特にMAXCKをみています。5000以上は重症で8000以上は最重症。(CKだけでなく、その他の採血データの基準値は必ずおさえましょう。)

その量を心筋傷害の指標としており、その代表格がCK(クレアチニンキナーゼ)とCK-MB。
これらの酵素はある量を超えると下がる。そのピークをピークアウトといい、酵素が上がりきったことを指す。CK-MBはより心筋に特異的な酵素のため確定診断としての目安となる。

  • 心電図では・・・どこの部位の障害なのかの判別。
  • 心エコーではEF(駆出率)やasynergy(壁運動異常)の部位と有無、弁膜症の合併はあるのか。
  • カテーテルレポートでは・・・ステント治療が成功したのか?残存狭窄があるのか??

 

※ちなみに急性心筋梗塞が疑われた患者では外来で、
「モルヒネ」 Morphine,
「酸素吸入」 Oxygen,
「硝酸薬」  Nitrate,
「アスピリン内服」Aspirinなどが中心に治療が行われます。
頭文字をとって「MONA(モナー)」という名称で心筋梗塞の応急処置を実施します。

 

治療・看護

  • 酸素吸入・安静の保持
    心筋酸素消費量の低下が起こるため、安静と酸素投与(2L/分)の開始(酸素投与量は酸素飽和度などにより増減する)。
    (不整脈を誘発したり、心筋虚血を増悪、梗塞巣の拡大や病態の悪化につながるため)
    また、血圧や心拍数の上昇は心仕事量の増加をまねき、治療を遅らせるため、注意。 不穏の場合は、安静が守れないので、回復が遅れたり、悪化したりすることがあるため指示された薬物投与の使用。
  • 疼痛の緩和胸痛が強いので、疼痛緩和のために、塩酸モルヒネ(麻薬)を使用する。
    (嘔気・嘔吐、呼吸抑制が起こる危険性がある)
  • 輸液管理とインアウトバランス
    状態の変化に合わせた薬剤投与を必要とすることがあるため、時間投与量を管理していく。またインアウトバランスに注意して全身状態の観察を行っていく。
  • 内服薬
    ①硝酸薬
    ニトログリセリン・ミオコール(スプレーも)など血管平滑筋弛緩作用を起こす狭心症治療薬。
    心筋に血液を供給する冠血管をはじめ、動・静脈の血管を弛緩させる。
    静脈血管系の拡張による心臓への静脈還流量減少(前負荷)により心臓の仕事量が減少する。
    ②抗血小板薬
    血小板凝集を阻害する作用
    バイアスピリン・プレタール・プラビックス・バファリンなど
    ③抗凝固薬
    血栓を溶解、血栓発生を予防する作用
    ヘパリン・ワーファリン・NOAC(プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ)など
    ④スタチン
    脂質異常症治療薬でコレステロールを下げるだけでなく、血栓を防いだり炎症を抑える作用
    クレストール・リバロなど
    ⑤B遮断薬
    交感神経を抑えることによって心筋酸素需要量を減らす
    アーチスト・メインテートなど
    ⑥Ca拮抗薬
    冠動脈周囲の血管の収縮を抑える作用。
    アムロジン・ペルジピンなど
  • 家族への援助
    心筋梗塞は生命に重篤な危機をもたらす疾患であり、家族は治療や状態について説明を受ける際に生命の危機的状況であることを告げられる。医療者は家族の不安に向き合い患者の状態と行われる治療と今後の見通しについて十分説明を行う。
    なによりも家族を支える行為は患者への十分なケアである。家族のつらさをうけとめる配慮と、家族の思いに耳をかたむけ関わっていくことが大切である。

 

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