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【病態】
・乳幼児が中枢神経系感染症に起因しない、また他の明らかな頭蓋内の異常を伴わない発熱に際して、通常短時間、全身性のけいれんをきたすものと広く定義されています。
・通常は38℃以上の発熱に伴うけいれんをいい、大半は39℃以上の発熱に伴うものをいいます。
・初発年齢は6か月~3歳までが全体の3/4を占め、特に1~2歳代に好発する。再発も3歳以降は少なくなるが、まれに8~10歳頃まで繰り返す場合があります。3か月未満あるいは5歳以降に熱性けいれんが初発することはなく、他疾患との鑑別が必要です。
・小児のけいれんの特徴
①神経系の発育が未熟であり、わずかな刺激で神経興奮が起こりやすい、けいれんの閾値が低い、脳が発育過程にあり、けいれんを起こしやすい。
②代謝が盛んであり、低血糖や脱水によるけいれんを起こしやすい。
③血液と髄液の透過性が高く、髄膜炎等によるけいれんを起こしやすい。
④家族歴がみられることが多い。
・発熱の原因
扁桃炎、咽頭炎等の上気道感染症が最も多く、更に中耳炎、気管支炎、肺炎、胃腸炎等があります。
【症状】
・発熱に伴い、熱の急激な上昇速度とその高さによりけいれんが出現します。
・上昇期を過ぎ、高熱が持続している時にけいれんが出現することもあります。通常は持続時間が1~2分程度、長くても数分以内に消失する。全身性右左対称性の強直、強直間代けいれんで、けいれん後に運動麻痺を残しません。
・多くの場合全身性強直間代けいれんであり、重積に至ることはまれです。
【治療・予防】
・再発予防にはジアゼパム座薬(ダイアップ)の発熱時間欠投与法が有効。熱性けいれんを反復する小児に対しては、ジアゼパム座薬を過程に常備させ、発熱の前兆に気付いた時点で速やかに投与します。
★ダイアップ
適用:小児の熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作に用います。
用量:4mg、6mg、10mgがあり、体重に応じて医師が指示を決めます。
副作用:多くの対象で軽度の鎮静、催眠、一部では一過性に軽度のふらつきあるいは興奮を認めるが、ジアゼパムの静注時とは異なり、呼吸抑制等の重大な副作用はありません。
作用機序:ジアゼパム坐剤の直腸からの吸収は速く、2歳未満の乳幼児を対象に、1回量0.5mg/kgのジアゼパム座剤を直腸内に投与すると、血中濃度は投与後15~30分で有効濃度域に達し、約8時間有効域を維持します。これを8時間間隔で2回投与すると、ジアゼパム血中濃度は2回目投与後再度速やかに上昇し初回投与後24時間は有効濃度域を維持します。
★ジアゼパム座薬の発作的間欠的投与法
・1回投与量:0.5mg/kgに相当するジアゼパムを含有する坐剤
・投与時間
初回:37.5度を目安に「発熱の前兆」に気付いた時点
2回目:初回投与後発熱が持続し、8時間後にも38度以上の発熱を認める場合
3回目:16時間後(初回から24時間後)に38度以上の発熱が続けば3回目を投与することもある。3回目を使用した後は、発熱が続いてもダイアップは使用しない。解熱薬は積極的に使用しない。
★解熱薬坐剤とジアゼパム坐剤の併用について★
解熱薬の使用は必要最小限にとどめるべきであるが、ジアゼパム坐剤に解熱薬坐剤を併用するときは、解熱薬を経口剤にするか、坐剤を用いる場合にはジアゼパム坐剤投与後少なくとも30分以上間隔をあけることが望ましい。(ジアゼパム坐剤に解熱坐剤を併用すると、ジアゼパムの初期の吸収を阻害される可能性があるため)
【看護】
・けいれん時の患児の状態の観察(持続時間、型、部位、眼球の動き、運動麻痺の有無、意識状態、チアノーゼ等)
・けいれん時には唾液や吐物の誤飲や舌根沈下による窒息を防ぐため、顔を横に向ける。けいれんがおさまり、強直がとれたら肩枕を入れる等して気道確保する必要があります。
・けいれんを起こしやすい患児の周囲から危険なもの(おもちゃ等)は除去します。けいれん時転倒やベッド等からの転落に注意が必要です。
※テオフィリン薬(テオドール、テルバンス等)は、発熱している小児、てんかん及びけいれんの既往のある小児等に投与する場合には、通常よりも低用量からの投与開始を考慮する。
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