今日からは不整脈について説明していきたいと思います。
そして、今日説明する不整脈は心房細動です。AFともいわれますね。
先日SRを説明した際にもありましたが、病棟ではほとんどがSRとAFです。
まずはその2つをしっかりと覚えましょう。
目次
心房細動(AF)とは
心臓は、刺激伝導系に沿って電気的刺激が伝わり収縮と拡張を繰り返しています。
その最初の刺激は通常ですと、洞結節からしか出ることはありません。[刺激伝導系について知りたい方はこちらから]
しかし、AFではその最初の電気刺激が心房内のさまざまな場所から不規則に出てしまうのです。
その数は350~500回/分という数です。数多くの電気刺激が心房内で起きているわけですので、心房は痙攣してるようなかたちになり有効な収縮・拡張はできていません。
350~500回/分という数の電気刺激が起きていますが、そのすべてが房室結節以下へ伝わり心室が収縮するわけではありません。房室結節がある程度は間引きしてヒス束以下へ伝導します。
しかし、房室結節にも限界はあります。
普段は60~100回/分程度の刺激を伝導しているのですが、それが350~500回/分となったらどうでしょう?
業務が最大8倍程度に膨れ上がります。全てを完全に伝導することなど不可能ですよね。
さらに、数多くの不規則な電気刺激が出ているため、唯へさえ電気刺激を伝導することに必死なのに、そのすべてを完璧に間引きして正しいリズムで伝導することなどできないのです。
そのため、AFの場合は頻脈となりやすく、R-R間隔も不整となってしまいます。
そして洞結節はどうしているのかというと、洞結節が電気刺激を出さずとも数多くの電気刺激がでているため休んでしまうのです。
つまり、AFの時には洞結節は電気刺激を出していません。
前置きが長くなってしまいました。それでは実際の波形を見てみましょう。
図がAFの波形となります。
AFを判断する際のポイントは以下となります。
①P波が見られない
②R-R間隔が不整
③基線が揺れているように見える(心房細動波、f波)
高齢者の場合には、基礎疾患がなくてもAFとなる場合があります。これを慢性心房細動といいます。日本では80歳以上では3~4%で起こります。
心房細動(AF)を見たときの対応
もともとの基本調律がAFで、循環動態が安定している場合にはあわてる必要はなく危険度も小です。
しかし、心拍出量が約30%低下するともいわれており、心不全を誘発しやすくなるため循環動態の観察はしっかり行いましょう。
明らかな循環動態の変化や動悸・息切れなどの症状が出現した場合には医師へ報告しましょう。
また、基本のリズムより頻脈や徐脈が続くような場合も医師への報告が必要となります。
基本調律がSRであった患者さんが、急にAFへとリズムチェンジすることがあります。
これを発作性心房細動といいます。
詳しくは次回説明しますが、これは危険度中です。
バイタルを測定し、循環動態変化が出た場合には直ちに医師への報告が必要になります。その際には診断のために12誘導心電図もとっておくと良いですよ。
治療
・頻脈に対してはレートコントロールによりHRを調整していきます。ジギタリス・β遮断薬・ベラパミルなどが使用されます。
・AFでは徐脈になることもあります。そのときにはペースメーカー植え込みが必要になる場合があります。
・AFでは心房が痙攣している状態で、有効に収縮していないため血液が滞りやすくなっています。そのため、心房内で血栓が形成されやすくなります。それは、脳塞栓などを引き起こす可能性があります。
血栓形成予防のため、抗凝固剤が導入されます。
ヘパリン点滴・ワーファリン・NOACなど。
・根治治療としてカテーテルアブレーションを行うこともあります。
心房細動の原因と発生多発部位について
原因については、加齢や甲状腺機能亢進症、虚血性心疾患、心臓弁膜症などがあります。
心房細動で、洞結節以外で電気刺激を発生しやすい場所として、左房に直結する肺静脈の付け根にある部位が知られています。
実は、新生児として生まれる前の胎児期には洞結節以外でも電気刺激を発生させる場所があるのです。(そのため、胎児は心拍数が速くなります。)しかし、出生と共に洞結節以外の電気刺激発生部位はその機能を停止します。
左房に直結する肺静脈の付け根にある部位は胎児期に、電気刺激を発生させる機能のあった場所で、再び電気刺激を発生し始めるのです。
どうして心房細動では徐脈になるのでしょうか?
いもぞん様ご質問ありがとうございます。
管理人のハッカ油です。
心房細動は基本的には頻脈になる不整脈ですが、房室の伝導障害が生じることで徐脈になります。
高度の徐脈で、自覚症状や心不全をきたすような場合には植え込み型のペースメーカーの適応になります。