目次
QT延長症候群(LQTS)とは
QT延長症候群(LQTS)とは、心筋活動電位が延長することにより起こる病気で、その呼び方の通り心電図上のQT間隔が延長している状態をいいます。
基本的には、自覚症状はなく、発作の無い場合の心機能は正常です。しかし、失神発作を繰り返して突然死に至る場合もある不整脈です。その原因によって先天性と後天性に分けられます。
原因
先天性QT延長症候群
心臓に器質的な異常がなく、心電図上でQT間隔の延長のみを呈し、家族歴(35歳以下の突然死など)がある場合が先天性QT延長症候群と呼ばれます。
小児や若年での発症が多く、原因としてNaチャネルやKチャネルの遺伝子変異などの機能異常を伴う遺伝性疾患(Romano-Ward症候群、Jervell and Lange-Nielsen症候群など)が原因となります。
交感神経刺激(運動や興奮)やびっくりすることが発作の誘因となります。
後天性QT延長症候群
後天性QT延長症候群は薬剤性や基礎疾患(高度な徐脈・心筋梗塞など)、電解質異常が原因となります。
発生機序
心筋細胞は収縮後、収縮前の状態に戻ります。QT延長症候群では、心臓の収縮時間(活動電位持続時間)が、心筋細胞イオンチャネルの障害によって延長することがこの病気の原因と考えられています。
心臓の収縮には、Kイオン・Naイオン・Caイオンが細胞内外へ移動することにより起こります。そして、このことにより心臓が収縮する時間を活動電位持続時間といいます。
QT間隔には活動電位持続時間が反映されます。Kイオン・Naイオン・Caイオンを出し入れするメカニズム(各イオンのチャネル)に異常がある場合に活動電位持続時間が影響されます。
QT延長症候群では活動電位持続時間が延長します。活動電位持続時間が延長するということは不応期が延長していることをいいます。この不応期では通常電気刺激が起きても心筋細胞は反応しません。しかし、この不応期であっても一部の心筋細胞は収縮できる状態にあります。そのため、不応期に電気刺激が起きてしまうと、準備できている一部の心筋細胞が反応してしまい、心筋細胞の足並みが揃わなくなってしまいます。そのことによりトルサード ド ポワンツ(torsade de pointes:TdP)とよばれるVT(心室頻拍)の一種へと移行し、突然死に至ることがあります。
波形
判断するポイント
①QT間隔が延長している(補正QT間隔が0.46秒を超えている)
QT間隔を簡単に見分ける方法として、R-R間隔の真ん中よりもT波の終わりが長ければQTが延長していることが考えられます。上図の波形でもT波の終わりはR-R間隔の真ん中を過ぎていますね。この方法はスクリーニングに有効で、しっかりとQT延長症候群を判断するためにはBzattの式で計算する必要があります。
Bzattの式で計算する
試しに計算してみましょう。ちなみに、なぜBzattの式で計算するかというと、QT間隔は徐脈になると長くなり、頻脈だと短くなります。そのため、実際のQT間隔を心拍数で補正した補正QT間隔(QTc)という指標を使用し、QTc=QT(秒)/√RR(秒)という公式を用いて表します。
図の波形で計算すると次のようになります。
QTc=QT/√RR
=0.68/√1
=0.68
となります。
QT間隔の正常値は0.3~0.45秒であり、補正QT間隔(QTc)が0.46秒を超えているため、この波形ではQT延長症候群(LQTS)であるといえます。
QT延長症候群を見たときの対応
QT延長症候群の危険度は中です。
患者の家族歴をチェックし、家族に突然死を起こした人がいる場合には要チェックです。
補正QT間隔を計算し、Drへ報告しましょう。
治療
・先天性QT延長症候群では、発作予防にβブロッカー(交感神経興奮予防のため)の投与を行います。
・高度の徐脈の場合には、一時的ペースメーカーの挿入を行う場合があります。
・後天性QT延長症候群では、原因疾患を除去することが基本治療となります。
・薬剤による治療や突然死のリスクが高いと判断された場合(治療中にも発作を繰り返す場合など)には植え込み型除細動器(ICD)の適応となる場合があります。
コメントを残す