心電図を読む際に、この2つの不整脈は覚えておいて欲しいという心室細動(VF)と心室頻拍(VT)。
どちらも危険度が高く、死亡してしまう可能性の高いものですが、いち早く発見・処置を行うことで救命が可能です。
そのため、この不整脈を発見でき、なおかつ自身をもって医師や先輩へ報告できるようにしていけるよう勉強していきましょう。
目次
心臓の動きから見る違い
異常を学ぶためにまずは、正常な心臓の動きについてです。
正常な心臓は刺激伝導系に沿って、洞結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維の順番で電気刺激が流れることにより、心臓が1回収縮します。
それでは、心室細動(VF)と心室頻拍(VT)では心臓の動きはどうなっているのでしょうか?
心室細動(VF)の心臓の動き
心室細動では、心室のいたる部位で電気刺激が発生している状態ですので、心室がプルプルと痙攣しているような状態になっています。
心室で刺激が発生し続けているため、刺激伝導系に沿って電気刺激が伝導してきたとしても、数多く発生している電気刺激の中の一つとなってしまうため正常な心臓の動きができていません。
心室頻拍(VT)の心臓の動き
心室頻拍では、心室内から連続して発生した刺激によって、心室が連続で収縮した状態をいいます。
これだけでは、心室細動との違いがあまりよく分からないですよね。
心室頻拍はリエントリー性の不整脈です。
イメージすると、心室細動は心室全体がバラバラに動いており、心室頻拍では心室の同じ場所で刺激が一定に起こっているような感じです。
そのため、心室頻拍では心臓の収縮と拡張はありますが、pulseless VT(脈なしVT)ではパコパコと空打ちしている状態で有効な心拍出が起きないために意識消失してしまいます。
心電図波形でみる違い
それではそれぞれの波形の違いを見ていきましょう。
まずは心室細動からです。
心室細動では、心室がバラバラに動いているために不規則に基線が揺れています。PQRST波は判断できないですね。
続いて、心室頻拍です。
心室頻拍では、R-R間隔がほぼ一定な幅の広いQRS波(ワイドQRS)が連続しています。
これは、リエントリーによるもので、規則的に心室で電気刺激が発生するためです。
この波形では、約150回/分という心拍数です。そのような頻脈でさらに幅の広いQRS波では心臓は空打ちしている状態になりpulseless VT(脈なしVT)という非常に危険な状態となってしまうのです。
まとめ
心室細動(VF)では心室がバラバラに動いており、心室頻拍(VT)では心室内でリエントリーが発生しているために一定の速い間隔で心臓が収縮・拡張を起こしてしまっているということですね。
心臓の動きをイメージすると、心電図もみえてくると思います。まずは、心臓の動きを思い描きましょう。
そして、実際にこの波形を発見できたら、他の誰よりも早く患者の元へと駆けつけるようにしましょう。
心室細動(VF)と心室頻拍(VT)はなぜ除細動(DC・AED)で治るのか
少し補足になりますが、心停止で除細動の適応となるのは心室細動と心室頻拍だけです。
それは、なぜでしょうか??
それは、心室細動と心室頻拍は心室の心筋細胞が揃った動きをしていないために、心臓の機能が低下・喪失されている状態であるためです。
つまりは、動きが揃っていないだけで、心筋細胞自体はしっかりと生きています。
そのため、心筋細胞の動きを整えてあげさえすれば心室細動や心室頻拍は正常な刺激伝導系に沿った流れで収縮と拡張をしてくれるのです。
そして、その動きを揃えてくれるために外部から電気刺激を与え、動きが揃うように無理やりリセットさせます。
それが除細動でありDCやAEDと呼ばれるものなのです。
一回の除細動で動きが揃えばいいのですが、揃わない場合にはもう一回必要です。そうやって何回か除細動を行い心筋細胞の動きを揃えようとしているのです。
心静止や無脈性電気活動(PEA)では、心筋細胞は死んでしまっているか、それに近い状態であるため除細動を行っても意味がないのです。
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